サンデー山口

　「シャレード」は、かたくななまでにコーヒーにこだわる生粋の老舗喫茶店。長年親しんできた常連客による閉店を惜しむ声が後を絶たない。
　コーヒーをこよなく愛していた原さんは、毎日のように喫茶店に通っていた学生時代、いつか自分の店を持つことを夢に見ていた。そして66年、地元・湯田温泉に同店をオープン。当時ではまだ珍しかったカウンターを取り入れ、コーヒーの味と客との対話を何よりも大切にした。「いいお客さんに恵まれて、本当に私は幸せ者。皆さんとの出会いが一番の財産です」と原さん。ゲーム機や食事など新しいものを取り入れる店が次々に登場する中で、じっくりとコーヒーを味わえる心地良い時間を提供したいと、頑として純粋な喫茶店を貫き通した。
　店舗前の道路拡張工事で立ち退きが決まった際、「誰しも終わりは来るもの。私もこの歳ですから」と、潔く閉店を決断した原さん。閉店を9日後に控え「『私＝シャレード』というくらい、この店は生きがいであり、私の全てでした。店舗はなくなっても、これからも心の中に生き続けるでしょう。今は感謝の気持ちでいっぱいです」と明るい笑顔で心境を語る。

1935年湯田温泉生まれ。66年に「シャレード」を開店して以来、コーヒー一筋に同店を営業。店舗前の道路拡張工事にともない、今月26日で38年の歴史にピリオドを打つ。70歳。