2004年10月22日
山口市が「包括的予算制度」を導入

市はこのほど、来年度の予算編成方針を発表した。今回初めて、各部局が与えられた枠の中で自主的な予算編成を行う「包括的予算制度」を導入。厳しい財政状況の中で、市民ニーズに的確に対応した行政経営を目指す。また、行政サービスへの民間活用を推進するための指針となる「民間活用ガイドライン」も同時に策定。予算編成に生かすことで、来年度の事業・業務について民間活用の可能性を探ることにしている。
現在の地方財政は、依然として厳しい状況にあり、地方分権の進展、地域の再生・活性化が求められている。そこで各自治体では、自主・自立の新しい行財政システムの構築を目指し、市町村合併を中心とした行財政改革を進めている。
山口市も、来年度には県央部1市4町での合併を控えており、新市誕生に向けた行政課題への取り組みが求められている。しかし、歳入面で市税収入の早期回復が見込めないことや、「三位一体の改革」の内容が依然として不透明。歳出面でも扶助費や公債費など義務的経費の増加が見込まれることなどから、より厳しい行財政運営が必要となってくる
市の収支試算(一般財源ベース)によると、来年度の歳入は296億8800万円と今年度当初予算に比べて4億4400万円減少。一方、歳出は317億8800万円と8億6400万円減少するものの、合わせると 21億円の不足となり、基金の取り崩しが必要になる。こうした状況から市は、来年度予算編成にあたって「包括的予算制度」の導入を決めた。
「包括的予算制度」とは、予算編成や予算執行に関する権限を、市民に近く、行政サービスを実際に担当する各部局に移譲することで、市民のニーズに素早く的確に対応しようとする制度。市民の目線に立ち、限られた財源の効率的・効果的な配分を行うことで、真に必要な事業について予算化できるという。
具体的には、財源をその性質によって「義務的経費」「政策的経費」「プロポーザル事業」の三つに区分した上で、各部局に包括的に配分する。「義務的経費」とは、人件費、扶助費、公債費など、予算編成時に各部局が裁量を働かせる余地がほとんどない経費。「政策的経費」とは、義務的経費以外の経常的な事業に必要な経費を指す。今年度予算をもとに各部局の割合を算出し、ヒアリングを行った上で配分を決定する。ただし、道路整備や義務教育施設整備など、大きな財政負担を伴うと同時に計画的な実行が必要な事業は「計画的な投資的経費」として配分枠を設定。中長期的な視点から効率的に実施する。また「プロポーザル事業」は配分枠に含めず、重点施策や各部局の創意工夫、緊急的な行政課題への対応などに充てる。各部局によるプレゼンテーションに対し、市長が割り当てる。
実際の財源配分をみると、一般財源の総額318億円のうち義務的経費は249億円、政策的経費が68億円(うち計画的投資経費6・5億円)、プロポーザル事業は1億円を見込んでいる。
各部局では、配分された一般財源に加え、国・県の補助金、使用料などの特定財源を組み合わせて歳出予算を編成する。従来が事業の積み上げによって予算編成を行っていたのに対し、歳入ベースで事業を組み立てることになるため、事業の妥当性や有効性の検証が必須。市財政課では、弾力的で効率的な行財政運営への効果は、最高限度額を定める「シーリング」よりも高いと見ている。
「民間活用ガイドライン」策定
来年度の予算編成にあたっては、「官から民への構造改革」を旗印にNPOや市民との協働・連携を図るための指針として「民間活用ガイドライン」が策定された。
ガイドラインに基づき、すべての事業・業務について 1.市が関与すべきか 2.民間による実施が可能か 3.外部委託が可能な業務があるか──の三つの視点でチェック。その上で、民間による実施または事業廃止、外部委託の検討などを行う。
外部委託の例としては、データ入力・集計など業務量が大きく定型的な作業や分析・検査、情報化など高度な知識、技術を必要とするもの、イベント開催や広報企画業務などが考えられる。市は〝民間化”によって、業務の専門性向上やスピードアップ、地域経済の活性化といった効果を期待している。
Posted by サンデー山口 at 00:00│Comments(0)
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