2004年11月19日
館長さんの読み聞かせ

「10月 とうさんは にぐるまに うしをつないだ それから うちじゅう みんなで……」。月に一度、湯田公民館のホールに絵本を朗読する男性の声が響く。同館の阿川士郎館長(61)が、ボランティアで行っている絵本の読み聞かせと紙芝居公演だ。開始から半年、まだあまり知られていないせいか、聞きに来る子どもが1人だけということもある。ただ、「1人でも、本を好きになってくれたらそれで良い」と、阿川館長は絵本選びや読み聞かせの練習に余念がない。
阿川館長が読み聞かせを行っているのは、毎月第2もしくは第4土曜日の午前10時から。「それじゃあ、そろそろ始めますよ」と、公民館ホールに集まった子どもたちに声を掛け、小学校低学年向けの絵本2冊と紙芝居2本を読み聞かせている。時間はおよそ30分。その間、子どもたちは阿川館長の言葉に耳を澄ませ、物語の展開を食い入るように見つめている。
阿川館長は、元小学校教諭。国語が専門科目で、在職中は学校図書館の仕事にも携わり、休み時間を利用して子どもたちに児童書の朗読などを行っていた。校長に就任してからも本を読む楽しさを児童らに伝え、最後の赴任地となった湯田小学校では校長室に「校長室文庫」を開設。自らが所蔵する絵本や児童書約700冊を自由に貸し出していた。
そして定年退職後の今年4月、湯田公民館館長に就任。慣れない仕事に日々追われながらも、「これまでの経験を生かし、地域の子どもたちのために何か自分にできることはないか」と考え、6月にボランティアで「館長さんの読み聞かせ」をスタートさせた。
この読み聞かせ、ただ本を読むだけで簡単そうに見えるが、実は準備などに時間が掛かり結構大変。毎回、開催日の1週間前、阿川館長は市立図書館に出向き、おもしろそうな絵本7~8冊を選定。それらを全て読み、どのストーリーが子どもたちを引き付けるのかじっくりと吟味するため、2冊に絞り込むのに1時間以上を要するという。さらに、家に持ち帰ってからは読み聞かせの練習。自室にこもり、どういう雰囲気で読んだら良いのか、どこに抑揚をつけようかなどを考えながら、声を出して何度も読み返している。
「子どもたちには良い絵本と出会ってほしいので、選ぶのはかなり慎重になる。また、言葉に詰まったりしたらストーリーが台無しになってしまうので、声を出しての練習も大切」と阿川館長。
こうした努力を続けているものの、聞きに来る子どもたちは平均3~4人。参加者1人という月も何度かあったという。阿川館長は「人数が少ないのは寂しい気もする。しかし、子どもたちがストーリーに夢中になる姿を見るのは、うれしいもの」と言い、「このような活動は地道にやっていくしかない。館長在任中はずっと続けていきたい」と話している。
12月の開催日時は、来月の湯田公民館広報紙で告知する。問い合わせ先は、同館(?922-8218)。
Posted by サンデー山口 at 00:00│Comments(0)
│ニュース