2005年07月10日
世界が注目ミュージシャン一楽儀光さん

「どこに住んでいても、クオリティーの高い作品を作れば、世界で認められる。そのことが証明でき、うれしい」。大内御堀在住のミュージシャン・一楽儀光さん(45)が、世界で最も権威あるデジタルアートの祭典「アルス・エレクトロニカ(Ars Electronica)」のデジタル・ミュージック部門で栄誉賞を受賞した。ドラム演奏で映像をコントロールするというパフォーマンスで、音楽業界でも独特の存在感を放つ一楽さん。この夏、全国版のテレビCMにも起用され、さらなる活躍が期待される。
「アルス・エレクトロニカ」は、1979年からオーストリアのリンスで開催されている世界で最も伝統と権威のあるデジタルアートの祭典。シンポジウムや作品展示など数々のイベントがある中で、会期中に行われるコンテスト授賞式の模様は、ヨーロッパ全土にテレビ放映されるなど注目度が高く、過去に坂本龍一、明和電機などの日本人アーティストも受賞している。
このコンテストのデジタル・ミュージック部門に今年、一楽さんは「どらビデオ」という作品で初エントリー。そのパフォーマンスはドラムセットをビデオデッキの代わりとして使用するもので、バスドラムをたたくと〝再生〟、スネアは〝逆再生〟、スモールタムだと〝2倍速再生〟などになり、リズムで映像を自由自在にコントロールする。出品作(6分)では、映像に映画「赤穂浪士」(56年東映)の松の廊下の一場面を使用。彼のドラムテクニックから生み出されるコミカルで奇抜な映像の動きは、審査員に強烈なインパクトを与え、栄誉賞に選ばれた。日ごろから口にしている「東京(大都市)でなくても、世界に通用する音楽は作れる」ということを証明した。
この「どらビデオ」は今年、日本の映像プロデューサーたちの目にも留まり、全国展開するファッション複合ビル・ラフォーレ原宿「夏のバーゲン」のテレビCM起用も決定。収録も終わり、現在、全国各地で放映されている。
「代表作は山口だから生まれた」
一楽さんが音楽活動を始めたのは高校時代。友人たちとバンドを組み、ジャンケンに負けてドラム担当になった。大学に進学したものの、音楽好きに拍車がかかり、中退して福岡市を拠点にロック、ジャズ、ブルースなどの演奏活動を展開。17年前に山口に戻り、中市商店街で中古CD店を開業した。しかし、そのころから演奏することへの興味が薄れ、3年間活動を中断。どうしようかと悩んでいた時、韓国の国民的サックス奏者・姜泰煥のコンサートに行き、衝撃を受けた。「ゴザに座り、独特の音色を醸し出す。従来のサックス演奏とは全く異なっていた。オリジナリティーにあふれ、自分が求めていた音楽はこれだと思った」と一楽さん。
それからは、自分の音楽を追求する日々。人がやっていないようなことに次々とチャレンジし、デジタル機材も積極的に取り入れていった。さらに、10年ほど前から先進的なアーティストたちとバンドを組み、国内だけでなく、ヨーロッパやアメリカでも活動。その音楽は特に海外で高く評価され、03年カンヌ国際映画祭でバルムドーム(グランプリ)を獲得した「エレファント」(ガス・ヴァン・サント監督)の挿入曲にも一楽さんのバンドの曲が使われた。
そして1年半前、代表作となる「どらビデオ」が完成するが、そこに欠かせなかったのが山口情報芸術センターの存在。ドラムで映像をコントロールするという一楽さんのアイデアを、同センターの伊藤隆之さんがコンピューターでプログラミングし、実現してくれた。「センターには高い技術を有する世界屈指のスタッフがそろっている。『どこに住んでいても…』と言っているが、この作品は山口に住んでいたからこそ生まれた」と振り返り、「せっかく良い施設が身近にあるのだから、山口の若手アーティストたちはどんどん活用し、世界に向け作品を発表してほしい」と思いを語る。
なお、一楽さんは9月に行われる「アルス・エレクトロニカ」の授賞式に出席。現地でそのパフォーマンスを披露する予定だ。
Posted by サンデー山口 at 00:00│Comments(0)
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