2005年08月05日
河原を花の散歩道に 四十八瀬川で新たな挑戦

小郡町を流れる椹野川の支流・四十八瀬川に毎週日曜日、2台の草刈り機の音が響き渡る。背の高さほどもある草を黙々と刈っているのは、流域に住む松永武之さん(76)と中村正義さん(69)。地元ボランティアグループ・四十八瀬川をきれいにする会(山本俊昭会長)に所属する二人は、繁茂するヨシを除いて草花を植えつけるという新たな試み「草種転換実験」に昨年から取り組んでいる。地道で息の長い作業だが、2年目に入ったいま、その成果は少しずつ現れ始めている。
四十八瀬川の環境は、72年の水害後に行われた河川改修を境に大きく変わった。それまでほとんど生えていなかったツルヨシが川べりを覆い、草陰や川へのゴミ投棄が横行した。当然ながら魚などの生き物も減少。川遊びを楽しむ子どもたちの声も消え去った。「昔は清流と呼ぶにふさわしいきれいな川でねぇ。春になると川面を盛り上げるほどの勢いで何十万というウグイの大群が遡上してきていた。コイ、フナ、ハヤ、ウナギ…1時間いれば100匹は釣れたもんだ。川には子どもたちの姿が絶えなかったよ」と懐かしそうに語る松永さん。今から13年前、地元の川を守ろうと立ち上がった流域住民らによって、同会は発足した。
以来、河川敷の清掃・草刈り作業を中心に、アユの放流やサイクリングなどのレクリエーション、水質検査、産廃反対運動などを実施。理解者も増え、会員は現在400人を超える。しかしながら年数を重ねるごとにヨシ刈りにかかる労力が大きくなり、会員の頭を悩ませた。町の下水道整備が始まったころからヨシの生育が一段と増し、大きなもので高さ3㍍にまで成長。刈っても刈ってもすぐに伸びてくるのだ。
2年前の反省会でのこと。毎年繰り返さなくてはならないヨシ刈りに頭を痛めていた会員たちに、一つのアイデアが浮かんだ。スイセンやヒガンバナなどの群生場所にはほかの草が生えにくいのをヒントに、ヨシの代わりに草花を植えることを思いついたのだ。いわばこの試みは、繁茂するヨシを伸びては刈る“受け身”から、手入れしやすい草花に植え替えて積極管理する“攻め”への姿勢転換。繁茂力の旺盛なヨシを除去するのは大変だし、どの品種がヨシに勝てるのかもわからないが、とにかくやってみようということになった。そんな中先頭に立ったのは、元県農業試験場職員で会の事務局も務める松永さんだった。
昨年4月から、ヨシを刈っては少しずつ土をおこし、町民らから提供された苗を植える作業が始まった。転換を図った面積は延べ300平方㍍。増水による流失や枯死でだめになった花もあるが、アヤメ、キショウブ、ヒメオウギズイセンなど6種の草花は大地に根を下ろしてくれた。うまくいっても10年、20年先にやっと形となる息の長い試みだが、これらを植えたところは周辺よりも草が少なくなったという成果も出てきており、周囲の期待も高まっている。
「休日になると若い親子連れがやってきては花の咲き乱れる河原で弁当を広げ、川遊びを楽しむ。川べりの散歩道は地域の憩いの場となる――想像しただけで辛い作業も楽しくなる」と口をそろえる二人。同会では、作業への協力者や苗提供者を広く求めている。
なお、同会は居住地に関係なく、子どもから高齢者まで川や海を愛する人なら誰でも入会できる。年会費は1家族500円。問い合わせ先は、松永さん(TEL083-972-6304)。
Posted by サンデー山口 at 00:00│Comments(0)
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