2005年08月24日
二島ベースボールクラブ 涙のラストゲーム

あきらめないことを学んだ2年3カ月
「初めて試合に勝った時の感動は、今でも忘れられない。監督や親など多くの人に迷惑をかけてきたけど、このメンバーで野球ができて本当に良かった」――。今月初め、チーム最後の試合を終えた二島ベースボールクラブの篠川隆斗主将(二島中3年)は、晴れやかな表情で語る。同クラブの2年3カ月の軌跡を追った。
二島ベースボールクラブは03年5月、野球部のない二島中に入学した男子生徒8人の「野球をしたい」という熱い思いから誕生したサークル。中学校の生徒数が減っていくことが予想されていただけに、部として新設することはできなかったが、彼らの思いはそれまで「全員加入」だった部活動の校則を「任意加入」に変え、「二島コミュニティクラブ」の一つと位置づけて活動することが許されたのだ。
野球経験ゼロ、キャッチボールもままならなかった8人は、約2年間、正月以外は土日も休まず練習に励んだ。しかし当初は、いくら頑張っても他校との試合で30点以上離されてばかり。「正直、心の中で何度やめたいと思ったかはわからない。みんな学校では騒がしくても、試合になると相手に圧倒され声がでなかった。自分たちの考えが甘かったこと、井の中の蛙だったことを痛感させられた」と篠川主将は振り返る。
だが、誰一人として音を上げることはなく「うまくなりたい」という一心で、練習に没頭した。そして新メンバー3人が入った昨年、川西中との対戦で“奇跡”が起きた。大接戦の末、1点リードを守り抜いての初勝利。全員がこの日のことを「涙が出るほどうれしかった」と口にする。
同クラブは今年、3年生9人が引退するため、部員が2人となり試合をすることが不可能になる。このため今月、潟上中、小野中、厚陽中の3校を招いて最後の練習試合を開催。試合には負けたものの、2年間で“最後まであきらめずに戦うことの大切さ”を学んだ彼らは、9対1で迎えた最終回、ヒットを重ねて2点を追加。男の意地を見せた。
投手としてチームを引っ張ってきた下川僚介くん(3年)は「この2年間、野球を通して友達との絆が強まり、自分の性格が明るくなった」と笑顔で話す。また、最初から指導に当たってきた元社会人野球の選手・監督の山田惠高さんは「最後まで一生懸命戦った子どもたちをたたえたい。すべてが一からのスタートだったこの経験は、きっとこれからの人生の糧になるだろう。わたし自身、定年後にこんな“青春”を味わえるなんて夢にも思わなかった。今は感謝の気持ちでいっぱい」と涙をにじませた。
サンデー山口
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