サンデー山口

街並みの魅力、若者にも

　市中心部を流れる一の坂川沿いや竪小路周辺地域に店を出したいという若者が、増え続けている。昨年は、後河原の老舗旅館「惣野旅館」１階にブティック、大殿大路の町屋に手づくり木製家具の店が開店。若き起業家たちは自らの個性を発揮しながら、古き良き街並みにすっかり溶け込んでいる。そんな彼らに続くかのように、この地域での商売を志す人たちは、店舗探しに奔走している。

　山口の秋の風物詩「アートふる山口」の会場としても知られる一の坂川・竪小路周辺。大内文化特定地域に指定されている歴史文化地区であり、古き良き時代の名残りを見せる町屋や伝統的な木造建築物の街並みは、市中心部にゆったりとした独自の雰囲気をつくり出している。
　そんな風土や景観に魅力を感じ、あえてこの地域に店を出したいと考える起業家が、数年前から増えている。山口商工会議所内の山口地域中小企業支援センターによると、04年後半から一の坂川周辺への出店希望者が増え始め、物販を中心に05年中は十数件の相談を受け付けたという。
　昨年は、地元や同商議所などのサポートによって、同旅館に「スローフ」、町屋再生事業で甦った大殿大路の町屋に「ＬＢ・ファニチャー・ワークス」が開店。両店舗とも地域との調和を図りながら、それぞれのペースで順調に商売を続けている。同旅館の主人は「若い人の前向きな姿を見て、後押ししたいと思った。スローフは通りの雰囲気に合っているし、開店後周辺に活気が出たように感じる」と話す。一方、家具職人の溝内健吾さん（26）、県立大学院生の平川和明さん（26）が開業した「ＬＢ・ファニチャー・ワークス」は、昨年末に企業組合化し、法人としての新たなステップに踏み出した。

物件は乏しく
　彼らの開業以降、出店希望者は着実に増加。しかしながら、同地域には入居可能な物件が乏しく、同センターへの相談者だけでも４人程度が出店待ちの状態だ。「一の坂川沿いにカフェを出したいと、４、５年前から考えてきた。こぢんまりとした店で、お客との対話を大事にしながらのんびり商売がしたい。自然たっぷりのこの景観がなければ、思い描く店はつくれない」と、強いこだわりを見せる中山絢子さん（27）。現在物件交渉中で、店舗部分以外の創業準備を着々と進めている。
　また、起業シティ・レッツで中国茶の店「茶座」を営む阿武直子さん（39）は、川沿いの物件を精力的に探したものの見つからず、運よく巡り合ったパークロード沿い、丘病院そばの店舗に、３月中旬の出店が決まった。阿武さんは「一の坂川の美しさにひかれ、１年前から後河原に住んでいる。四季のうつろいを感じる箱庭のようなところ。どうしてもこの土地に店を出したかった」と、地域の魅力を語る。
　これらの出店希望に対しては、地元商工団体や同商議所などで構成する「人美響のまちづくり推進会議」（中野勉会長）のメンバーが中心となって物件交渉にあたっているが、空き家があっても家主が遠方で話が進みにくい、賃貸・買い取り可能な土地や建物の情報が少ないなど苦戦。周辺の雰囲気にマッチした店舗の増加、にぎわいの創出を願う同会議では、有効物件などの情報提供を広く求めている。連絡先は同商議所（TEL083-925-2300）。