2006年01月21日
23日に自店をオープン ニシノカオリパンの先駆け

24歳、異色の職人
パン職人の末成秀一朗さんは、24歳、茶髪の青年。外見からは想像しにくいが、店舗の立ち上げや既存店の立て直し、県産小麦100%のパンの開発と、職人歴わずか4年にして数々の実績を残してきた逸材だ。県産小麦「ニシノカオリ」にこだわる彼は、23日に開店する旭通りの自店で巧みな腕を披露する。
末成さんがパン製造の道に入ったのは20歳の時。知的障害者通所授産施設・鳴滝園内のパン工房職員となったのが始まり。働いてすぐに「向いている」と直感した。製造技術を学ぶため、02年7月に防府市のパン店、同年9月には九州フジパンへと転職。わずか2週間で赤字続きのチェーン店店長に就いた。03年5月、美祢市の授産施設に招かれ、パン工房を立ち上げ。初めて試した自家配合の製パンを成功させ、3カ月で1千万円以上を売り上げる。9月、今度は「あじす葡萄の森」に入社するや、不振だったパン店を立て直し、おいしいと評判の人気店に引き上げた。まさにカリスマ的存在だった。
さらにその間、04年中は、ブドウから作った純粋な天然酵母を開発。県が推奨するニシノカオリを100%使ったパン作りにもいち早く取り組み、難しいとされていた製品化に成功した。県が主催したニシノカオリの勉強会では、添加物や乳製品を一切使用せずニシノカオリのみで仕上げた試作品を披露。この小麦は扱いにくく、一般に出回っている“ニシノカオリパン”は通常、粉にグルテンを添加して膨らませてあることから、関係者らから熱い視線を浴びた。
これが縁で、“食物アレルギーでも食べられるクッキー”で特許を取った「お菓子のピエロ」(宇部市)から、特許商品をもとにパンのレシピを作って欲しいとの依頼を受け、ニシノカオリで試行錯誤。医学的根拠はないが、小麦アレルギーを持つ末成さんの息子は、試作品を食べても症状が出なかった。「もしかすると、ニシノカオリは小麦アレルギーに対応するかもしれない」--ニシノカオリに対する関心はさらに強くなった。
大阪や神戸で新たな技術を身につけた後、昨夏はニシノカオリを巧みに扱えるパン職人として、山口大学公開講座の講師を務めた。「若いながらも、妥協を許さず、常にベストを尽くす職人。粉の性質を的確に判断し、非常にうまく扱う。今後が楽しみ」と、県産小麦・パン研究者の高橋肇同大農学部助教授。末成さんは「落ち着いたら、ニシノカオリのパンだけでなく、アレルゲンを除いた低価格のパンも提供したい」と話している。
Posted by サンデー山口 at 00:00│Comments(0)
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