2006年03月19日
地域に広がる認知症支援の輪 徳地

ボランティアグループ・折り梅の会 手作り紙芝居で普及啓発を
2015年、戦後生まれの団塊の世代が、65歳以上の高齢者になる。これに伴い、増加が懸念されているのが認知症だ。国立精神・神経センター精神保健研究所の調べによると、同年には全国で約260万人、65歳以上の約8・4%が認知症になると予想されている。このような中、地域の人が積極的に認知症高齢者とその家族を支えようとする徳地地区の取り組みを追った。
認知症への正しい知識と理解の普及啓発に取り組むボランティアグループ「折り梅の会」(中島利津子代表)は15日、認知症をテーマにした手作りの紙芝居を完成させた。
同会は04年10月、旧徳地町が主催した認知症啓発映画の上映会の後、有志の運営スタッフが中心となり、“多くの人に認知症の正しい知識を伝えるとともに、地域をあげて介護者を支援していこう”と結成。これまで、勉強会や周防大島町への研修視察、さらに認知症をテーマにした講演会などを実施してきた。05年9月、少人数で啓発活動を行える方法がないかと考えていた時、絵でわかりやすく伝えられる紙芝居を作ろうと意見が一致。それから月に一度のペースで集まって内容を決め、イラストや色塗りなどの作業を進めてきた。そして今月15日、徳地弁の手作り紙芝居「ごはんを食べたことを忘れちゃったおばあちゃん」が完成。食事をしたことを忘れる認知症の初期症状が出始める高齢者とその家族の物語で、家族が状況をきちんと受け止め、温かく対応することの必要性などを訴えている。
中島代表は「紙芝居を通してまずは認知症への興味・関心を持ってもらいたい」といい、「認知症高齢者の介護は、家族だけでは難しいということをみんなに理解してもらい、地域全体で温かく見守り支える態勢ができていけばうれしい」と話している。
悩み、本音を一緒に語ろう
「ここに来るまで自分一人が不幸だと思っていた。共感してくれる人に会え、どれだけ心が楽になったか分からない」――認知症者を支える家族の会・やすらぎの会は、奇数月の第4木曜日の午前中、徳地のあったかプラザ(市社会福祉協議会徳地支部)に集まり座談会を開いている。日ごろなかなか理解してもらえない介護のつらさやストレス…。この日だけは、同じ立場の人だからこそ、素直にありのままを話せるという。
同会は、徳地保健センターと市社会福祉協議会徳地支部が、認知症者の家族らが気軽に情報交換できる場を作ろうと03年9月に設立。現在、80歳前後の高齢者を介護している女性約10人と、保健師または市社協の職員が毎回参加している。
「始まりは“あんたにお金を盗まれた”だった。日に日に症状はひどくなっていき、肉体的にも精神的にも限界だった」という介護者の女性も「ここに来て気が楽になった。自分よりも大変な人がいることを知ったし、みんな同じ苦しみを味わっているから、自分のことのように何でも親身になって聞いてくれる」と涙ながらに話す。
また、メンバーは「認知症者は人前と家族の前で性格が全く変わることがあるので、周囲に介護のつらさを分かってもらえなかったり、介護の仕方を批判されたりし、大きなストレスにつながる」と声をそろえる。
同会の田中安枝会長は「介護者は、周りの人の“よ~やりよるね”“たいへんね”の一言で救われた気持ちになる。いつ誰がなるか分からない病気なので、認知症について、みんなが正しく理解しておく必要がある」と話している。
問い合わせは、同センター(TEL0835-52-1114)へ。
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折り梅の会は、当事者の生の声や意見を聞こうと、23日(木)午前9時半から徳地保健センターで行われるやすらぎの会の座談会で、紙芝居を初披露する。
Posted by サンデー山口 at 00:00│Comments(0)
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