サンデー山口

全国２カ所　今月法改正→再犯防止に一手

　松美町の山口刑務所（大島敬造所長）で今年度、受刑者がインターネットテレビ電話を使って就職活動をする全国初の事業が始まる。刑事施設・受刑者処遇法の施行に伴って新設された就労支援策の一つで、総合職業訓練施設に指定されている山口、山形の両刑務所が試行先に選ばれた。受刑者が社会復帰する上で最大の課題となる就職を出所前からサポートすることで、再犯防止につなげるのが狙い。

　５月24日、制定以来約１００年ぶりの見直しとなった改正監獄法「刑事施設及び受刑者の処遇等に関する法律（刑事施設・受刑者処遇法）」が施行された。法務省と厚生労働省では法改正に合わせ、元受刑者の再犯防止や更生に欠かせない就労を支援する「刑務所出所者等総合的就労支援対策」を開始。テレビ電話を使った新事業もその一つで、同法が模範囚に対して外部との電話などを認めたことから実現した。具体的には、元受刑者を採用する意向のある企業（協力雇用主）のリストから就職希望先を選び、企業の採用担当者にハローワークに出向いてもらって、刑務所内と結ばれたテレビ電話で面接する仕組み。
　山形刑務所と共に事業モデルに選定された山口刑務所は、刑期８年未満の初犯受刑者を収容する施設。全国に希望者を募って適格者を受け入れ、理容や木工、左官、ボイラー運転など11種目もの職業訓練を受けさせている。東京、大阪のハローワークに接続されるテレビ電話の導入は、受刑者が全国から集まっているという点からも画期的。大型のモニターを設置して集団面接も行いたい考えだ。予算は約50万円。機種選定や導入時期に関してはまだ検討段階で、今後の計画については、更生保護機関、職業安定機関と共に構成する準備組織を立ち上げて協議、決定する。
　山口刑務所の入所者は、収容定員６３３人を１割程度上回る６９５人（23日現在）。平均で40歳代、10人に１人は60歳以上と、出所後の就職は年齢的にも厳しい状況だ。法務省の発表では、保護観察中の再犯率（03年）は有職者が７・６％に留まっているのに対し、無職者は39・７％と約５倍。それだけに、新たな就労支援の試みに対する関係者の期待は大きい。
　ただし、問題は協力雇用主となる企業の確保。一般失業者も多い中、元受刑者を雇い入れる企業はそうそう見つからない。刑務所では契約企業を中心に交渉を重ねるとともに、山口や広島などのハローワークとも連携して地元企業の掘り起こしにも力を注ぐ。出所者を試験的に雇った企業に対する助成金「トライアル雇用奨励金」の支給もＰＲしていくという。