2006年06月23日
徳地 郷土の歴史・方言を本に

ふるさとのことご存じですか?
徳地で、ふるさとの歴史や伝統的な方言を独自に研究している2人のお年寄りが、成果をまとめた本を出版。ユニークな発想と独自の切り口もさることながら、郷土の足跡をなんとか後世に伝えようという熱い思いが、地域住民だけでなく多くの人に共感を呼んでいる。
「戦った志士たち 幕末維新と徳地」
吉松文雄さん(77)
徳地伊賀地出身の吉松さんは、県内で長年小学校教諭をつとめてきた。退職後は、もっぱら郷土史研究に没頭。もともと文章を書くことにも興味があり、これまでに教育実践について記した「遙かなる悲願」や、地元の説話などを集めた「伊賀地の話」などの著書がある。
このほど出版した「戦った志士たち 幕末維新と徳地」(A5判、216㌻、千円)は05年に出版した同名著書の加筆版。04年に市内の劇団「はぐるま座」が徳地で演劇「高杉晋作と奇兵隊」を公演したことをきっかけに、これまで取り上げられることのなかったふるさと徳地と明治維新とのかかわりについて記そうと決意。幼いころ地域のお年寄りから聞かされていた説話を思い出しながら、裏付けとなる資料集めに奔走した。前半は、高杉晋作をはじめ幕末維新で活躍した人物の紹介や大筋に触れ、後半では徳地とのかかわりについて言及。とりわけ幕末維新後に起こった奇兵隊脱退騒動に着目し、激動の時代に翻弄された徳地の若者の姿を描いている。
こうして初版は完成したが、出版を前に新潟県中越地震が発生。当初は無料で配る予定だったが、被災地新潟県小千谷市にある長州兵士の墓を復興する資金に充ててもらおうと、本を渡した人からカンパを募り全額を寄付した。
本書は、初版後に判明した新たな事実や、義援金送付のやりとりなどを大幅に加筆して改訂したもの。吉松さんは「故郷を愛することは、故郷を知ることから始まる。若者が減りつつある徳地にあって、祖父、曾祖父の代から語り継がれてきた歴史を形にしたかった」と力強く語る。
なお、この本は徳地の南大門(TEL0835-52-1772)などで販売している。
「ふるさとの言葉」
有井チエ子さん(78)
「こねー暑い日は畑仕事がえろーてよいよやれんですいの」「それですっちゃ」徳地の畑での会話の一部。「このように暑い日は、畑仕事をするのもつらくて大変ですね」「そうですね」という意味だが、若い世代にはなじみが薄く、理解しがたい会話かもしれない。しかし、徳地をはじめ県内各地の農村部では、日常的にその土地ならではの方言がまだ話されている。
徳地船路に住む有井チエ子さんは、長年地元で話されている方言を書き記し、05年にそれらをまとめた「ふるさとの言葉」を出版した。
日々めまぐるしく変化する情報社会の中にあって、生活の一部である言葉も急速に変遷している。有井さんは、東京に住んでいる孫と電話する際に、自分の話す言葉が孫に理解してもらえず、会話が成立しなかったことからそれを痛感。また、地元の小学生がきれいな標準語を話すことに、えもいわれぬ寂しさを感じ、ふるさとの言葉を残しておきたいという思いから執筆を決めた。それからというもの日常生活の中で、自分や地域住民の口をついてでた「ぶち」や「のんた」などの方言をこまめに書き留め、その数は千語にも上った。「方言には、標準語にはない温かさがあり、家族、親類、地域の人々を根っこでつなぐものだと思う。何ら学術的な価値はないが、書籍にすることで後世に残れば」と話している。
徳地堀の徳地図書館などで閲覧できる。
Posted by サンデー山口 at 00:00│Comments(0)
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