2006年07月12日
徳地鯖河内 運転ボランティアの岸本さん

高齢化の集落を支える 7年間、毎日病院まで送迎
深刻な過疎化と高齢化が進む徳地鯖河内。周南市と隣接する標高270㍍の山あいの集落(全109世帯)には週に3日しかバスが来ず、平均年齢約70歳の住民たちにとって集落外への移動は簡単ではない。そんな中、7年間〝運転ボランティア〟としてお年寄りを町の病院へ送迎している一人の男性がいる。
「人生の先輩方に1年でも長くこの世におってほしい。入院はしなさんなと言うとる。通院ですむなら、運転ができる限り私がどこまでも連れていく」――。64歳の時に大動脈瘤を患い生死をさまよった岸本進さん(72)は、退院後、自分が住む鯖河内で“運転ボランティア”として、人生を全うしようと心に決めた。
この地区には、病院や買い物ができるスーパーがないため、生活するには約10㌔の山道を下って町に出なければならない。しかし、高齢のため運転できない人が多く、委託バスも週3日(1日2便)しか運行していないのが現状。住民は今現在、厳しい生活を強いられている。
岸本さんは、自身の妻が宇部市にある山口大学医学部附属病院に見舞いに来る時、いつも「5回も電車やバス、タクシーに乗り換えないとここまで来られない」とぼやいていたことを思い出した。
50年間、無事故無違反の実績を生かして今の自分にできることは何か。「これしかない」と、旧徳地町の社会福祉協議会に相談し、県警察本部の了解を得て、1カ月後、“運転ボランティア”として新しい人生のスタートを切った。
それから7年間、岸本さんの手帳は常に1カ月先まで予定がぎっしり。現在約50軒のお年寄りが登録しており、毎日自家用車でそれぞれの家に迎えに行き、防府や山口、宇部などの病院まで送迎。1日に4往復することもあるという。
岸本さんは、病院で何時間待ったとしても、ガソリン代として徳地地区内は500円、防府市や旧山口市、宇部市などの病院へは2千円をもらっているだけ。仮に鯖河内からタクシーで防府市内の病院まで行けば、往復で約2万2千円かかるため、収入の少ない高齢者にとって岸本さんの送迎は生命線ともいえる。
2年半前から送迎を頼んでいるという林春枝さん(82)は「毎回病院で次の予約を確認してもらったり、スーパーや生活用品店に連れて行ってもらったりと、本当に助かっている。先日95歳になる夫がトイレで倒れた時も、次の日にわざわざ非常ベルを買ってきてくれた。本当の子どもでもここまでやっちゃぁくれんですよ」と涙ながらに話す。
岸本さんは「この地区では自分はまだまだ若い方。安全運転ができる限り一生かけてボランティアを続けたい」と話す一方、「自分が運転できなくなった時のことを考えると不安は大きい」と、今後への懸念も抱いている。
Posted by サンデー山口 at 00:00│Comments(0)
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