2007年02月04日
森森クラブ中野代表 旧陸軍の機関誌を寄贈

営内時事、凍傷予防法、短歌…
日常生活伝える貴重な資料
湯田温泉駅前にある書斎工房・中古本の店「森森クラブ」の中野秀之代表(62)が1月30日、自身の店にあった旧陸軍歩兵第42連隊の機関誌「山口連隊営内月報」(昭和4年発行)4部を上宇野令の陸上自衛隊山口駐屯地(末廣治之司令)に寄贈した。末廣司令は「旧軍の資料は大半が燃やされているため、現存するのを見たのは初めて。当時の隊員たちの日常生活がわかる大変貴重な資料」と話している。
旧陸軍歩兵第42連隊は、1897年から1945年にかけて上宇野令に駐屯し、日露戦争やマレー半島上陸作戦に出兵した部隊。その後、ここには米・英軍などが駐留していたが撤退し、1955年に現在の第17普通科連隊が小月から移駐した。
山口駐屯地では81年から機関誌「桜映」を年4回発行しているが、それ以前に機関誌があったという事実はこれまで知られていなかった。明治期から戦後までの軍装品など約1700種類を収蔵している史料館「防長尚武館」(同駐屯地内)でも、旧軍の日常生活がわかるような記録はなかったという。
森森クラブの中野代表が、この月報を見つけたのは昨年8月。宮野にあった店を湯田温泉駅前に移転するため、大量の資料を整理していた時に偶然発見。移転後、店に飾っていたところ市自衛隊協力会の会員がそれを見て自衛隊に情報提供した。その後、隊員が店を訪れた時、父親が戦時中42連隊に入っていたという中野さんは「有効に活用してもらえれば」と寄贈を決めた。
月報はB4サイズで、4~8ページ。昭和4(1929)年1月1日発行55号、2月1日発行57号、3月1日発行58号に加え、1月10日発行の入営記念号「営内月報特別号」の合わせて4部を寄贈した。旧字を用いた「山口聯隊営内月報」という題字の下には、「發行所 山口町道場門前九番地 營内月報社」「定價 本號ニ限リ金参錢」などと書かれている。紙面は、写真やイラスト、表などが効果的に使われており、宇部中学校生徒の秋吉台野営演習の様子や「営内電話新設」「縫靴工場動力設備完成」といったニュース記事、山口という地名の由来、1、2月の主要行事をまとめた「営内時事」などもあってバラエティー豊か。中には、日本、アメリカ、イタリアなどの持つ兵器の数や陸軍予算をイラストでわかりやすく描いた「列国陸軍軍備比較概覧」、凍傷予防法について細かく解説した記事もあり、戦争と隣り合わせだった当時の状況も伺える。
また、短歌のコーナーでは「腰に帯び手に持つ武器は軽けれど 重きは己がつとめなりけり」といった句が紹介されている。さらに「入営雑観」には「野田界隈は早朝から羽織袴の入営者や附添人の群で賑はふ。山口附近からの入営者には青年団旗や町旗の美しい見送りも見られる」と書かれており、地域をあげて新入隊員を歓迎していた様子も見えてくる。
末廣司令は「いただいた貴重な資料は、今後防長尚武館に展示する」と言い、中野さんは「多くの人に見てもらえれば」と話している。
防長尚武館とは?
駐屯地内にある史料館「防長尚武館」には、旧軍の遺品や当時の装備品・教範・写真・兵器など830品目、約1700点が展示されている。
日本に7本しかない元帥刀のうち寺内正毅・寿一親子の2本があるほか、寺内正毅が朝鮮総督時代に贈呈された「朝鮮屏風」、明治23年に制定された「金鵄勲章」など貴重な品々も多い。これらは、145人の提供者から成り立っており、中には大村益次郎が米国人ヘボン氏から英語や数学を習っていた自筆の数学ノートといった“珍品”もある。
入場無料。開館時間は午前9時~午後4時で、見学希望者は広報班(TEL083-922-2281)に連絡を。
Posted by サンデー山口 at 00:00│Comments(0)
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