サンデー山口

　この冬は、エルニーニョ現象の影響から世界各地で「暖冬」になり、日本でも例年にない暖かい日が続いている。山口県では春の訪れを告げる「春一番」が14日に観測された。この暖冬の影響で、「青のり漁ができない」「防寒着が売れない」など、困っている業種が続出。一方で、除雪や凍結防止を行う道路維持業者や工事関係者などは、安全で仕事がしやすいと、暖冬を喜んでいる。

　毎年この時期に最盛期を迎える山口湾の青のり漁だが、今年は暖冬で海水温が高く、雪も降らなかったため、種付けをしても全く成長せず、山口と嘉川の漁業協同組合では今年の漁を中止。全く採れなかったのは、30年以上続く青のり漁でも初めてのことだそうだ。
　唯一、漁ができたのは阿知須漁協の漁師二人。ただし、例年より約１週間遅く、昨年12月30日から漁を始め、１カ月以上も早い２月第２週には漁を終えた。水揚げ量は昨年の半分以下。漁業関係者は「こんだけ暖かかったら青のりがちぎれて商品にならん。来年もこんなだったら山口の青のりは終わりじゃな」と肩を落としている。
　また、ブロッコリーやキャベツ、白菜などの冬野菜市場も影響を受けている。昨年の台風で、今年度の冬野菜の収穫量は昨年の８割ほどだが、暖冬の影響から野菜の成育が予想以上に進むという現象が起きている。３月出荷用のため、時期をずらして植えていた野菜が一斉に急成長し、今時期に集中、市場への供給過剰を余儀なくされている。また、暖かい日が続くため、家庭での鍋料理や煮物料理の回数が減り、葉物野菜の一般消費も減少。キャベツは１玉約１００円と、昨年の半値で売られている。
　そのほかにも、寒波が訪れず、まとまった雪が降らないまま春を迎え、ダメージを受けた業種は少なくない。特に、気候に大きく左右されるため、気候産業とも呼ばれるアパレル業界では、コートやダウンジャケットなどの防寒着の売れ行きが、今年は全く伸びずに頭を抱えている。中市のちまきやでは、予定より早く冬と春の端境期を迎え、例年より１週間以上早い時期での冬物一掃セールと春物衣料の販売も始めた。そのほか、フレッシャーズスーツや婦人用卒・入学用スーツも早めの販売を検討している。営業・外商企画部の斉淳一郎部長は「これから春物衣料の売れ行きに期待したい」と話している。
　ガソリンスタンドでは、昨年と比べて灯油の売上が約２割減少、冬用タイヤの販売本数では８割以上も減少しているという店もある。
　しかし一方で、暖冬が良い影響をもたらした業界もある。道路の維持を行う山口国道維持出張所では、１月末までの凍結防止剤の使用量は例年の２割以下、阿東町の基地で待機する除雪車の出動にあたっては１割以下となっている。また、年度末に集中する道路工事は、毎年雪や雨、凍結で工期が延長するが、今年は進ちょく状況も良好。同所職員たちは「安全な道路維持への投資が少なくてすむし、スリップ事故も減り、交通面では暖冬はとても助かっている」と話している。