2007年11月18日
朝比奈敦さんの小説「国境」

07年下半期 文學界の同人雑誌優秀作に! 同人誌作家にとって唯一、芥川賞への登竜門
小郡上郷の朝比奈敦(本名:矢野栄一郎)さんの小説「国境」がこの度、文藝春秋発刊の老舗文芸誌「文學界」の「07年下半期同人雑誌優秀作」を受賞した。同人誌作家にとって芥川賞への登竜門と言われる、権威ある賞であり、朝比奈さんは「今までで一番自信を持てる作品。高い評価を受けることができてほんとうにうれしい」と話した。
3年ほど前に山口高校教諭を退職後、現在は大阪文学学校のチューター(指導助言者)をしている朝比奈敦さん(61)は、文学同人誌「風響樹」(山口市)と「飃」(宇部市)で小説を書く傍ら、99年からは「VIKING」(大阪府茨木市)のメンバーとしても執筆活動を続けてきた。受賞作品「国境」は、今年8月発刊のVIKING680号で発表した中編私小説である。
体調を悪くし退職した元高校教諭の男が、骨休めにと1週間の滞在予定で訪れた台湾が望める南の島に、結局は3カ月近くも居着くこととなる。そこで出会う島の住民や本土からの移住者との交流、構築される人間関係、島での暮らしぶりなどが現代の時間軸で描かれている。これは朝比奈さん自身が旅した八重山諸島の一つの島が題材になっており、文中の核となる登場人物も、実際に島で出会った人がモデルになっている。
「07年下半期同人雑誌優秀作」は、全国の100を超える文学系同人誌に掲載された全作品を対象に、文學界の中で毎月ベスト5が選出され、さらに半年ごとにその中の最優秀作品を決める、同人誌界で最も権威ある賞。受賞者で、のちに芥川賞や直木賞を取った作家もおり、同人誌作家にとって芥川賞への唯一の登竜門とされている。
今回の最終選考には朝比奈さんの他に6作品の計7編がノミネート。昔話や思い出話をもとに書かれる作品が多い中、「上昇や下降といった気運もなく、何ともイメージのしにくく書きようのない“今の日本”を題材に取り扱い、それを見事に表現している」との評価を受け、評者の全員一致で見事、07年下半期優秀作品に選ばれた。作品は文學界12月号に転載されている。
朝比奈さんは「約25年の執筆活動で、やっとここまでこれた。この作品で賞が取れないならもう終わりだと思っていたほど、万全の出来だった。それだけに、優秀賞の評価を受けたことがとてもうれしい」と喜びを語った。
Posted by サンデー山口 at 00:00│Comments(0)
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