2008年09月27日
落胆する住民、増える猿害

仁保地区での取り組み
「あ~ぁ、それはもう気分が悪い。食べごろかなと思って採りにいったらやられている。何もする気がしなくなる」―。全国的に野生動物と人間とのトラブルが増加している近年、市内でも仁保、徳地、嘉川、宮野地区でサル被害が目立つようになっている。これに対して仁保地区では協議会を立ち上げ、このほど、サルを追い払うガーディングドックの養成訓練を開始。独自にさまざまな取り組みを実施している。
05年度の被害額が800万円だったのに対し、昨年度は2800万円。市内のサル被害額はこの3年間で急速に増加している。戦後、国が行った針葉樹植樹による山の食べ物の減少、耕作放棄地の増加による行動範囲の拡大、放棄果樹の増加など多くの原因が絡み合い、次第にサルが里山に出るようになった。
市内でも、嘉川に続き2番目に農家数が多い仁保地区では、約10年前から田畑が荒らされる被害が深刻化。6年前から地域で猿被害協議会を立ち上げ、「やれることはとにかく何でもやろう」と市内でも先進的な取り組みを行っている。
「30年前に見かけ、20年前から少し被害が出るように。10年前からは多発するようになった。このままでは、来年にはさらに被害が増える」と話すのは、同会事務局の吉廣利夫さん。
県農林総合技術センターによると現在、同地区一帯には100匹以上のサルが生息し、大きく分けて二つの群れに別れて行動している。農地に人がいないのが分かると集団で襲来。カボチャやイネ、サツマイモなどの作物を30分から1時間で根こそぎ奪っていくという。特に被害がひどい時には、出荷用のニンジン畑やキュウリ畑が全滅。1回の襲撃で損失が数十万円にも上った。
同会ではこれまで市や県の援助を受け、群れのメス猿に発信器を装着。地区に8カ所ある受信機に近づくと警告灯が点滅する仕組みを整えたり、ネットによる作物の囲い込み、サル用電気柵を設置したりと、さまざまな防止策を取り入れている。
また、昨年は長野県大町市での研修に参加。そこでの意見を参考にして9月から、サルを追い払って田畑を守るガーディングドックの育成を始めた。
しかし一方で、被害拡大の不安もぬぐえない。
昨年、同会と連携した山大農学部の調査によれば、サルは農作物を食べることで栄養状態が改善。3年に1度ほどの出産から毎年出産するようになり、さらに、6割だった子ザル餓死率が今では1割になっていることが判明。このまま行けば必然的に数は増え、同時に被害の増加が予想できる。
同センターの小枝登さんは「野生生物にエサや野菜くずは絶対に与えてはいけない。それは結果として人間にもサルにとっても悪い結果を生む」と呼びかけ、吉廣さんは「仁保地区だけの問題ではない。全地域が団結して取り組まなければ」と話している。
Posted by サンデー山口 at 00:00│Comments(0)
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