サンデー山口

　現代詩人の登竜門として全国的にも知られる中原中也賞（市主催）の第18回受賞作品に、さいたま市在住の会社経営・細田傳造さん（69）の詩集「谷間の百合」（書肆山田刊）が選ばれた。69歳での受賞は、第16回受賞者の辺見庸さん（当時66歳）の記録を更新して最高齢となる。
　細田さんは、4年前に詩の習作を開始。受賞作は昨年6月に初出版した詩集で、34編が収められている。選考委員からは「一見、老人の日常がうたわれているように見えながら、深い生と死の亀裂が注視されていたり、日常的な風景から非日常や深い思考にジャンプしたりするなど、年齢を超えて若々しい言葉の世界が創造されていた」と評価された。
　台湾のホテルで受賞を知ったという細田さんは「習作を始めたころは楽しくて仕方なかったが、このごろは詩ってとても重い気持ちがして痛いくらいだが、ちゃんとした作品を書いていこうと思う」とコメントした。
　今年は、公募と推薦合わせて全国から176冊の詩集の応募があった。だが、県内からはゼロ（昨年は3点）だった。
　贈呈式は中也の誕生日の4月29日（月・祝）に湯田温泉のホテル松政で開かれる。