2018年01月01日
2017年の流行から見る 山口の感染症動向とその対策

▲調恒明山口県環境保健センター所長
実際の紙面はコチラ(公開期間は発行から1カ月間です)
目に見えないウイルスや細菌などの病原体が体内に侵入して増殖することで、発熱や下痢、せきなどの症状が発生する感染症。2017(平成29)年度は、手足口病、ヘルパンギーナ、ダニ媒介性疾患などの感染症が全国的にも注目され、インフルエンザなどの代表的な感染症以外にも注意が必要であることが認識された。そこで、山口県環境保健センター所長で地方衛生研究所全国協議会会長なども務める医学博士・調恒明さんに、その動向や対策方法を聞いた。
この時期注意したい感染症の種類
一般的に毎年冬にかけてインフルエンザやノロウイルスが流行期に。前者は正月明けから流行することが多く、昨年も同様。まず子どもに流行し、それが大人に広がっていく傾向があります。
保育園・幼稚園、老人福祉施設では、冬場は特に手洗いを徹底したい。ノロウイルスについては、食事の十分な加熱が必要。さらに患者が出た際は、吐しゃ物や便などにも十分注意を。
ワクチンが有効なのは、インフルエンザ、ロタウイルス感染症、おたふく風邪、水痘、麻しん、風しん、日本脳炎など。罹患した場合、インフルエンザ以外のウイルス感染症は治療法がなく、基本的に対症療法となります。
ワクチン以外の予防法は、単純ですが睡眠・運動などで体力(免疫力)をつけること。また、症状が出た際は「必要以上に抗生物質を望まない」「処方された通りに薬を飲みきる」などの意識づけも重要です。呼吸器感染症で調子が悪いときは、マスクをして周囲にウイルスを飛散させない配慮も心掛けましょう。
本センターでは山口県の感染症情報を集約した週報をウェブサイトで公開中です。
世代別の傾向と対策
小児の罹患が多いRSウイルスは一般的に冬が流行時期ですが、5年ほど前から前倒しが始まり、昨年も9月ごろに流行し始めています。パラインフルエンザ感染症やアデノウイルス感染症、特徴的な発疹が症状として現れるヘルパンギーナや手足口病なども小児が多くかかります。
胎児は、胎盤を通してIgGという抗体が母体から移行することにより、母親の免疫をもらっています。その効果は、生後6カ月くらいまでに切れるとされます。なお、昨年厚生労働省が作成した抗菌薬使用の手引きでは、小児の呼吸器疾患はほとんどがウイルス性で抗菌薬が効かないため、可能な限り抗生物質は控えると定めています。
高齢者が注意したい感染症は、インフルエンザ、結核、細菌性肺炎など。結核は県内では毎週5人が罹患している計算となります。高齢者は体力の低下や糖尿病・がんなどの症状によっても免疫力が落ちます。老人福祉施設では、流行に気を配り、来訪者に手洗いを促進することも大切です。
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近年増加している感染症
【梅毒】2010(平成22)年ごろから男性の、2013(平成25)年ごろから女性の患者数が全国的に増えており、報告数は少ないとはいえ、県内でも2016(平成28)年度から倍に増えた。妊娠している女性が梅毒に感染すると、先天梅毒児が生まれる可能性もある。
感染初期には痛みを伴わず、感染に気付かない場合も多いので、不特定多数との性行為は避け、不安を感じたらすぐに検査を受けること。HIV検査の時に同時に検査を受けることもできる。
【SFTS(重症熱性血小板減少症候群)】新しいウイルスによるダニ媒介性感染症で、毎年全国で60人前後の患者が報告されており、西日本に感染者が多い。ウイルスを有するマダニに刺されないよう、山や草むらに入る時には服装に注意、忌避剤の使用も有効。体調不良の動物に噛まれたり、体液に触れたことから感染したまれな例も報告されており、屋内のみで飼育されている場合を除いて弱った猫などから感染する危険もある。感染した場合の死亡率は20%と高く、特に50歳以上は発症率が高いため、注意が必要だ。
Posted by サンデー山口 at 00:00│Comments(0)
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