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2003年05月08日

そうなのだ

 毎朝、6時30分に起きて、身仕舞いをして、顔を洗い、新聞を取りに門まで行く。ポストから新聞を引き抜き片手に持ち、門扉を開く。
 生ぬるい春の朝、軽く扉を手で押し開いたとき、「あっ、又、同じ日常が始まる」と思った。その瞬間に身体は硬直し、時間が止まった。
 目の下に転がっていた石が急に大きくなった。木蓮の花びらの輪郭がくっきりと空に浮き上がる。蟻が右足を踏み出したまま静止する。
 一つの私の身体は、真新しい新聞を手に持ったまま門扉に寄りかかって動かない。もう一つの私の身体は、軽々と庭を歩きまわる。
 冬に切りすぎたと思ったバラは、今やぐんぐんと音をたてて伸び、トゲを金色に光らせている。その間を私は注意深く歩く。つま先立って…。たった一本庭の隅に密やかに生えていた蔦は、グリム童話の「ねむり姫」の館のように、ツルを私の家の軒に這わせる。見る間に家も庭も暗くなっていく。紫のヒヤシンスは半分開きかけた花びらを閉じ、もう一度地中の球根に閉じこもる。
 私は、新聞を開き、ツルの間からかろうじて射し込む朝の光を探して読む。紙面には、掌くらいの大きい活字が並んでいる。が、意味のある言葉はなにもない。「あ」だったり「く」だったり、時には「M」、「f」「シ」なんていう字が見える。
 一日一日は意味のないのが当たり前。連続というのは、ただ続くこと。
 硬直した身体に戻れないかもしれない。


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Posted by サンデー山口 at 00:00│Comments(0)おんなの目
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