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2005年09月07日

 なんの音もしない昼間のシーンとした一刻。ついこの間まで、夏休みの子供の声が朝から聞こえていたのに。三軒向こうの赤ちゃんの泣き声もやんでいる。お昼寝だろうか。こんなに静かな日は、遠くに電車の走る音が聞こえるのだが、今日はそれもない。
 ポーン、と軽い音がして、なにかがスレートの庇に落ちた。それからトントンと転がる音がし、ガチャとコンクリートの犬走りに落ちた。静かな空気だけが流れている中で、音がリズミカルに響いた。ポーン、トントン、ガチャ。私は色々と想像してみたが、わからない。なんだろうと、行ってみると、褐色の羽のセミが白い腹を上に向けて転がっていた。
 セミの死骸はこの夏、何匹も見た。歩道に干からびていたもの、身体の半分以上アリにたかられ食われていたもの…。私は、セミを見ながら、畑に埋めようか、アリの食物にしようかとしばらく考えた。中を取り、庭の草の中に置こうと決めた。もし、アリに運があれば冬場の餌にありつけるし、セミには柔らかい褥ができる。
 羽に触れた瞬間、セミは身体をブルブルと小刻みに震わせ、それから起き上がった。飛び出た真ん丸い黒い目をギロリと一瞬私に向け、飛び立っていった。電信柱二本向こうへ一気に飛んだ。死んではいなかった。気絶していたのだ!
 気がついたら、赤ちゃんは泣き、竿竹屋の売り声が大音響で響いているし、なによりもまだまだ元気なセミの声が耳に痛い。音が満ちていた。


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Posted by サンデー山口 at 00:00│Comments(0)おんなの目
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