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2005年11月30日

登山 3

 巷でいうところの高齢者男性二人が、私にこう言った。「靴は、登山靴がいいですよ。蛇がいますから」。リュックサックから「これは蛇避けスプレー、これは蜂、これは熊に遭った時のもの…」と次々取り出して見せた。腰にはチリンチリンと涼やかな音の鈴がぶら下がっている。この人達は本物だ! 「蛇が出るといけんから、僕等が先に登るよ。ついておいで」
 ちょっと開けた所に木のベンチが置いてある。その古びた具合がなんともいい。Fさんと座って、水を飲んだ。「糞があるから踏まないように」と先を行くオジサンが叫んだ。Fさんが水を吹き出してしまった。糞は握り拳より小さな物で、こんもりとした黒い中に木の実の種が、白いトゲのように刺さっていた。夜ここでがんばって糞をした小動物がいとおしくなった。
 20分も歩くと頂上が見えてきた。それからが急勾配。這うようにして、真っ直ぐに登っていたら「こっちの道が上りやすいよ。無理したら膝に負担がかかる」とオジサンが言った。手も差し伸べてくれる。しかし、その手は握れない。彼は痩身なのだ。私がひっぱると引きずり込み、落としてしまいそうで怖い。
 鳳翩山頂上は四畳半くらいの広さしかない。眺めは素晴らしい。「山口は盆地なんだね」と私はしみじみと思った。本当に周囲は山ばかり。小指一本かざすとその中に町一番の大きな建物も隠れてしまう。我が故郷は小さな可愛い町だ。頂上には10人の登山者がいる。平均年齢約70歳。私は歌まで口ずさんでいた。快調だ。


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Posted by サンデー山口 at 00:00│Comments(0)おんなの目
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