アクセスカウンタ
QRコード
QRCODE
読者登録
メールアドレスを入力して登録する事で、このブログの新着エントリーをメールでお届けいたします。解除は→こちら
現在の読者数 88人

店長情報 トップページ
店長情報

2006年09月13日

後悔 1

 友人のMさんから、か細い声で〝風邪をひいてしまったので家から出られないの。床の中で本を読みたいので、お薦めの本を貸して〟という電話があった。
 我家には、友人達がいらないといって持ってきた本が沢山ある。部屋の中いっぱいに、両側の窓もつぶして本箱を並べている。だから、薄暗く風通しが悪い。Mさんの本を選んでいると、身体がじとじととしてきて、汗が流れてくる。
 私は唐突に沖縄のひめゆり部隊を思い出した。あの人達は洞窟に潜んでいたのだ。沖縄はここより暑い。どんなにか気持ち悪かったことか…それ以上に死への恐怖がすさまじかったろう。頭上で爆弾が破裂する音がやまないのだ。私は本の間から薄ぺらい〝生きている兵隊〟を引き出した。石川達三著。
 解説を読むと〝虐殺があったと言われる南京攻略戦を描いたルポルタージュ文学の傑作〟とある。ルポルタージュとは現地報告。年譜を読むと、石川達三は華北に従軍している。〝四分の一ほど伏字にされて、昭和13年「中央公論」に発表されたが、即日発売禁止となる。戦後刊行された完全復元版と一字一句対照し、棒線をつけて伏字部分を明示した伏字復元版〟。
 これは絶対Mさんは読んでいない。彼女も私も専門はミステリーだもの。この本にしよう。これが風邪に倒れたMさんの床の友となるだろう。汗が背中を気持ち悪い感触を残して流れていく。


同じカテゴリー(おんなの目)の記事
 見事なびらん (2019-07-24 00:00)
 主題 (2019-07-17 00:00)
 バスが来たら (2019-07-10 00:00)
 居るよ、居る、居る。 (2019-07-03 00:00)
 きんと雲 (2019-06-29 00:00)
 本の海に潜って (2019-06-19 00:00)
Posted by サンデー山口 at 00:00│Comments(0)おんなの目
上の画像に書かれている文字を入力して下さい
 
<ご注意>
書き込まれた内容は公開され、ブログの持ち主だけが削除できます。