2006年09月13日
後悔 1
友人のMさんから、か細い声で〝風邪をひいてしまったので家から出られないの。床の中で本を読みたいので、お薦めの本を貸して〟という電話があった。
我家には、友人達がいらないといって持ってきた本が沢山ある。部屋の中いっぱいに、両側の窓もつぶして本箱を並べている。だから、薄暗く風通しが悪い。Mさんの本を選んでいると、身体がじとじととしてきて、汗が流れてくる。
私は唐突に沖縄のひめゆり部隊を思い出した。あの人達は洞窟に潜んでいたのだ。沖縄はここより暑い。どんなにか気持ち悪かったことか…それ以上に死への恐怖がすさまじかったろう。頭上で爆弾が破裂する音がやまないのだ。私は本の間から薄ぺらい〝生きている兵隊〟を引き出した。石川達三著。
解説を読むと〝虐殺があったと言われる南京攻略戦を描いたルポルタージュ文学の傑作〟とある。ルポルタージュとは現地報告。年譜を読むと、石川達三は華北に従軍している。〝四分の一ほど伏字にされて、昭和13年「中央公論」に発表されたが、即日発売禁止となる。戦後刊行された完全復元版と一字一句対照し、棒線をつけて伏字部分を明示した伏字復元版〟。
これは絶対Mさんは読んでいない。彼女も私も専門はミステリーだもの。この本にしよう。これが風邪に倒れたMさんの床の友となるだろう。汗が背中を気持ち悪い感触を残して流れていく。
我家には、友人達がいらないといって持ってきた本が沢山ある。部屋の中いっぱいに、両側の窓もつぶして本箱を並べている。だから、薄暗く風通しが悪い。Mさんの本を選んでいると、身体がじとじととしてきて、汗が流れてくる。
私は唐突に沖縄のひめゆり部隊を思い出した。あの人達は洞窟に潜んでいたのだ。沖縄はここより暑い。どんなにか気持ち悪かったことか…それ以上に死への恐怖がすさまじかったろう。頭上で爆弾が破裂する音がやまないのだ。私は本の間から薄ぺらい〝生きている兵隊〟を引き出した。石川達三著。
解説を読むと〝虐殺があったと言われる南京攻略戦を描いたルポルタージュ文学の傑作〟とある。ルポルタージュとは現地報告。年譜を読むと、石川達三は華北に従軍している。〝四分の一ほど伏字にされて、昭和13年「中央公論」に発表されたが、即日発売禁止となる。戦後刊行された完全復元版と一字一句対照し、棒線をつけて伏字部分を明示した伏字復元版〟。
これは絶対Mさんは読んでいない。彼女も私も専門はミステリーだもの。この本にしよう。これが風邪に倒れたMさんの床の友となるだろう。汗が背中を気持ち悪い感触を残して流れていく。
Posted by サンデー山口 at 00:00│Comments(0)
│おんなの目