サンデー山口

　天ぷら油や米やじゃが芋、卵なんぞを買ったら重くて疲れ果てスーパーのベンチに座って休んでいた。
　総菜売り場からは美味しそうな匂いが流れてくる。冷たいアイスクリームのなんと種類の多いこと！　ワインにビール、焼きたてのパン。ちょっと目を遠くにやれば衣料品の鮮やかな色が飛び込んでくる。化粧品に医薬品、靴に宝石まで売っている。
　私は突然胸がキュッとなり、下腹が痛くなってきた。立ち上がり店内を見回しものすごく怖くなった。私は何も作りださない。全部消費生活なのだ。ちり紙一枚、人参一本、全部買う。私は本当に怖くなった。今、年金で生活しているが、政府の政策で、また税制が変わり、なにか事を設けて、合法的に義務として課せられ、年金から天引きされ、結果として額が引き下げられることになったら、と思うと消費だけの生活は怖いことだ。他人に生殺与奪の権が握られている。受身の人生は不安だ。物が溢れていても私は餓死するかもしれない。
　友人が通りかかり、「なにをしている」と聞いた。私は恐怖を語った。友人もベンチに座り込み、「怖いわ」と言った。それから買い物篭をもう一度点検して半分にした。「自己防衛にも限度がある」と友人が言った。知り合いを見つけては、ベンチに引っ張ってきて二人して恐怖を説いた。自信と安心を持って生活していくには、どうしたらいいのだろうか。ベンチで急遽鳩首会議となる。恐怖で食欲もない。あばら家でぼんやりと座している自分の姿が見えてくる。