サンデー山口

　私はつい先日６１歳になった。６０歳の還暦で本卦還り（干支が一巡し、起点となった年の干支に再び戻ること。そのことにひっかけて再び生まれた時に帰るという意味を持つ。産着に使われていた魔除けの赤色のちゃんちゃんこなどを着るのもそこから来る）した。
　今までの６０年間は、結果として不完全であっても、人として有為に活動できた年月であった。０歳で手にする民法３条１項の「日本で男女とも権利や義務の主体となることができる」を履行してきた。良き市民であった。
　本卦還りした後は、一度人生を終わり、次の人生を歩んでいることだと私は理解している。二度目の世界は極端にいえば、善悪の判断や慣習、道徳というものが違う別の世界だ。いろんな義務からも放免されたと思っている。良き市民とは“さようなら”だ。
　楽しいではないか。今まで禁忌とされていた扉もガッと開ける！　そこに快楽は隠されている。物事もドンドン忘れろ！　覚えておかなければならないことなんてあるかしら？自分の住所氏名を捨てる。　
　前の一巡目の人生にあまりないことが二巡目に必ずある。死である。（日本人の最長寿記録は１２０歳）。三巡目はない。二度目の人生は命がけとなる。