サンデー山口

　過日、菜香亭で開かれた村田克敏さんの指し物細工展を見た。
　村田さんは曽祖父、祖父と明治以来つづく指し物師の家系で、父親の喜輔さんも家業を継いでいたが高齢のため仕事を止めている。
　村田さんは大学を出て「指し物師では食えない」という父の声でサラリーマンになったが３９歳のとき会社不況を契機に山口市へ戻り父親の仕事を基礎から習った。
　その後家計のため一時サラリーマンに戻ったが、昨年の定年退職をきっかけに指し物師として復活することにした。
―「物づくり」は相手になる対象が口をきかぬ「物」であり、勝手に解釈して手を加えようとしても頑として受け付けぬのが「物」である。「物」に対しては己れを殺して向き合う以外に手はないが、そのうちに単なる「物」が生きものに見えてくる。－これは評論家福田恆存のことばである。
　いま物づくりは建具、指し物、竹細工、木彫、塗師などの多くが手づくりから離れて大量生産や洋式工法に押されつつある。日本古来の文化を支えてきたすべての物づくりには後継者の存在が重要課題となってきた。
　これから山口に伝承技術の灯を継続しようとする村田さんの意気込みに期待する。　（Ｆ）