サンデー山口

　信号機のない横断歩道で道を渡るために待っていると、目の前をいろんな車が通り過ぎる。数年前から目立つのが老夫婦二人組。白髪の男性が運転していて、横にちんまりと帽子をかぶった女性が座っている。宅急便の車もバスも若い男女が笑いあっている車も通る。窓から犬が覗いている車も通る。
　時に横断歩道に佇む私を見て、止まる車がある。その時、私は考える。どれにしょうかな、と。
１止まってくださってありがとう、のんた。という老女の風体で少し腰を曲げ、首を突き出しお辞儀を繰り返しながら数メートルを渡る。
２まあ、嬉しい。さっきから止まってくれる車を待っていたのよ。という風情でスキップをして渡る。
３全く車を見ないで横を向いて知らん顔をして渡る。
４お急ぎのところ止めさせてゴメンナサイ。と下を向いて全速で走る。
５これからどこへお出かけ。いいですね。というふうに運転手さんに向かって笑顔をふりまいて渡る。
　どれにしょうかと迷っていたら、早く渡れ、と運転手さんが手を振る。手の甲をこちらに向けて追い払うように。決めた。老婆にしよう。腰を曲げゆっくりと渡る。アリガトサンデス、ノンタ。真ん中で深くお辞儀をする。早く渡らんかい！