サンデー山口

　第67回県美展が13日から開催されている。今回の大賞受賞者は左官職人の山本さんとＴＡＯさん。しっくいで作られた作品で、審査員に「凛とした佇まい」と評された。
　「春と修羅」というタイトルから宮沢賢治のことが思い浮かぶ。彼は「農民芸術概論綱要」という文章も書いているのだが、その一節を引用する。
　「職業芸術家は一度亡びねばならぬ／誰人もみな芸術家たる感受をなせ／個性の優れる方面に於いて各々止むなき表現をなせ／然もめいめいそのときどきの芸術家である」
　賢治は、生活者から離れてしまった芸術を取り戻すために、働く者たち（農民）に向かって、芸術家の感性を持て、得意な方法で各自の表現をなせ、そのとき一人一人は芸術家なのだ、と説いた。およそ90年前の賢治の熱い言葉は、「オレ達の仕事」と名付けた作家の心にも、しっかり刻み込まれていたのではないかと思う。
県立美術館副館長 斎藤　郁夫