サンデー山口

　今月17日からコレクション特別企画展「香月泰男　シベリア・シリーズと原画」が始まる。多くの素描や下絵を完成作とともに紹介する。
　たとえば、作家自身が「ホロンバイル草原の白い砂地に屍体が風化して、白骨化してゆく姿」と語った作品「ホロンバイル」には数枚のデッサンが残されている。それらを見ると、人間や動物の頭蓋骨、剣、靴などが散らばる凄惨な場面の描写から、細部が省略されて造形的な変化が加えられていく様子がわかる。かなり抽象化された完成作のイメージを読み解くための、大切な手がかりとなりそうだ。
　「穴掘人」のデッサンは、たばこの小さな空箱に描かれている。ふと浮かんだイメージ、それが消えてしまう前に何でもいいから手の届く範囲の紙片に描きとめた、そんな画家の様子も想像できる。
　大きな仕事のきっかけとなった小さなイメージの数々。完成作とともに大切に伝えていきたい。
県立美術館副館長 斎藤　郁夫