サンデー山口

　Ｋ氏が詩集を出版した。その祝いの品を買いに久しぶりにデパートに行った。私は出版祝いには、著者が近くなら、一緒に祝いの膳を囲むことにしている。遠くなら、何か品物を贈ることにしている。Ｋ氏は、40年からの詩友。好みは知り尽くしている。
　デパートに行ったら、ちょうどバーゲンセールをしていた。バーゲンセールの中から祝いの品を選ぶつもりはないが、まあ、ちょっと覗いてみよう。
　喧騒と人熱れ、それに匂いといろんな色が目に飛び込んで来る。匂いは化粧品であり、色はスカーフ類。
　まあ、きれいな色！　鮮やかな抽象画のようにワゴンいっぱいに積まれたふかふかのスカーフ。思わず手に取った。紫色とも茜色とも見える、朝焼けのようなスカーフを首にかけて鏡の前に立った。似合う！　
　次に、灰色の夕闇から、黒い夜に変わるように順に染め分けられていて色の変化のあるスカーフを巻いて鏡の前で品をつくる。似合う！
　冬にはスカーフは必需品だ、なんて、心の中で買う言い訳をしている。悪い癖で見ると欲しくなるのだ。バーゲン品だから格段に安い物だが、両方買うわけにはいかない。長く長く鏡の前で思案して、朝焼けの方を買った。黒いセーターにこれを翻して歩こう。ルンルン。疲れたのでＫ氏の品は買わなかった。