サンデー山口

　門の前に立った。玄関が見える。門が開けられない。チャイムを押せば、奥さんでない方が出てこられるだろう。わかっているけれど、私は少しびっくりするだろう。葬儀に参列してお顔も拝見したから、わかっているのだけれど、知らないお身内の方が玄関から出てこられたら、やはり驚く。突然逝ってしまわれたから、まだ周囲の様子も奥さんに最後にお会いした時からなにも変わっていないので、季節が少しだけ春になってきているけれど…。
　「サンデー山口」の会社の方に向かった。扉を押すと、奥さんが宝と大切にされていた「サンデー山口」の社員の方達が忙しく働いていらした。
　私は故サンデー山口常務取締役開作冨喜子さんを“奥さん”と呼んでいた。常務でも冨喜子さんでもなく、“奥さん”。私の中では、奥さんの後ろにはいつも夫君の故開作惇氏が見えていた。それが奥さんをふっくらゆったり見せていた。
　アンコールワットにご一緒したことがある。岩を連ねた高く古い遺跡に登った。急な階段、手すりもなにもない。私は奥さんより少し早く登って、手を差し出し奥さんを引っ張った。私の力が強すぎて、奥さんもろともひっくり返った。笑いながら空を見たら、青かった。
　今日の空も青いから「さようなら」なんて言えない。