サンデー山口

　ちょっとした用事があり博多に出かけた。目的地が
デパートや商店が密集する中心街の近くだったので、ぶらぶら歩いた。デパートに入った。
　あら、素敵！　まあ、きれい。なんて良い色なんでしょう。おお、なんという斬新なデザイン。
　服に靴に、真珠のネックレス、ダイヤの指輪、夏用の帽子、スカーフ、色鮮やかな口紅が寄って来る。デザイナーたちが、―これでどうだ、これで身を飾れ。心まで美しくなれるぞ。どうだ、どうだ―と私に迫ってくる。　欲しい。
　日頃は化粧もしない。古い服を着ている。商店街に出かけることも少なくなった。洋服や宝石を見ても欲しいとは思わなかった。歳のせいで欲望がなくなったと思っていた。が、どっこい。挑戦的なデザイナーの作品に挑まれて、欲望が目覚めた。
　この三角形のバッグの形、よくぞ考えついたわね。ワンピースは、ピンク系統のグラデーション、中に一本の緑の線。うーん、発見。ジュエリーにいたっては、美しすぎて見飽きない。人生の出発点に戻れるなら、宝石のデザイナーになりたい。
　欲しい。
　手元不如意。見るだけに留めておかねばならない。歳のせいなのか、欲望を押さえ込むことも容易にできる。デザイナーさん、またね。