サンデー山口

　朝、5時過ぎ、東に向かって歩き出した。住宅街の角を曲がったら、突然山の間から太陽が現れた。まん丸で金色の光の矢を放っていた。出会いがしらの対面で逃れようもなく、私は強烈な光線で目を射られた。目を瞑った。
　目の裏にイヴが立っている。ミトコンドリア・イヴ。両手を広げ両足に力をこめ、太陽に向かって立っている。
ミトコンドリアＤＮＡはつねに母系遺伝のかたちを取る。女性から女性にのみ伝えられるもの。赤ん坊を産むその苦痛のつきることのないサイクル。現生人類のもっとも近い共通女系祖先がイヴと名付けられた。
　私の中にいるイヴが朝の光の中に現れた。私に笑いかける。女性から女性へつながれてきた元気なＤＮＡを意識した。雄雄しいイヴ。おはよう、イヴ。　
“約十万年前になると現生人類がアフリカから広がり始め、最終的には世界の地域へと移住していった。移住していったのは、アフリカ十三の一族のうちたったひとつだけだったことがわかっている”。（イヴの七人の娘たち）
　私に伝えられたイヴのＤＮＡは、私で切れる。私には娘がいない。五秒間くらい残念な気になったが、優秀な女性はいっぱいいる。イヴは確実に受け継がれていく。おはようイヴ。女性達は健やかです。