サンデー山口

　痒い日も痛い日もあり高三郎　寺田良治
　高三郎？　解説にはこうある。“キク科の草。田んぼの畦などに多い。白い素朴な花をつける”。私は、草花の名はもちろん特性も何も知らない。高三郎はどんな草なんだろう。痒くて痛い草。不思議だ。
　牧野新日本植物図鑑を開く。見ると花は野菊に似ている。“葉は皮針形で細きょ歯があり、対生し、茎とともに短毛があり、両面ともいちぢるしくざらつく”そうか、畦や草原を歩くと、葉が足に当たり痒かったり痛かったりするのだ。楽しい気分の日には、ちょっと痒くて、怒った日は足に痛い。
　なぜ名が高三郎なんだろう？　語源は不明、とある。高三郎さんが、この草が足に触れると、痒くて痛いと大騒ぎをして草の存在を広めたのかもしれない、なんてね。
　友人が「これが高三郎だと思う」と白い野菊のような可憐な花を持ってきてくれた。葉には、小さなきょ歯が並んで光っていた。
　まへがきもあとがきもなし曼珠沙華　黛　まどか
　突然、火のような朱色の花が真っ直ぐに茎を伸ばして咲く。今年も猫を埋めた畑の上に緑の葉の予告もなく細長い朱色の花びらが開く。そこ辺り、夕暮れになっても明るい。有毒植物の一種である、と図鑑に記されている。毒の花は美しい。