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2016年10月19日

風に吹かれて

実際の紙面はコチラ(公開期間は発行から1カ月間です)

 映画「ベトナムの風に吹かれて」を観た。もう一カ月以上経っているが、まだベトナムの風は私の身辺を舞っている。あれは、一枚の絵だったのだ。夢の絵、いつまでも風に舞う美しい絵。
 新潟の雪の中に建つ築百年は超えていそうな黒光りする柱の家。偏屈な兄夫婦。そこで長年の過酷な生活を経て、今は認知症を患っている母。父の葬儀で帰国したベトナムで日本語教師として働く娘は、この母をこの地からベトナムへ連れていく。
 北の雪の地から南の風の地へ。旧家からアパートへ。黒い着物と白いアオザイ。忍従と解放。人情深い人々に囲まれ順調に二人は生活を謳歌していくが、物事は簡単には進まない。母は大腿骨を骨折し認知症は深まる。介護に疲れる娘。
 映画には涙した。しかし、現実にはたいていの人は、人生の終末ベトナムの風に吹かれることはない。
 あの映画は、人生の最後をこうありたいと願う私達の夢の絵なのだ。現実にあった話ではあるが、映画用に脚色してある。認知症のベトナム女優の奇跡の復活劇もしかり、熟年の恋の話もだ。夢を盛ったのだ。映画は物語であり美しい絵なのだ。
 ほとんどの人は、清く正しく困難に耐え、働き、生きてきた。最後の期には、気持ち良い風が私達の上に吹かねばならない。映画のように。


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Posted by サンデー山口 at 00:00│Comments(0)おんなの目
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