サンデー山口

▲ディオニュソスとアリアドネ

実際の紙面はコチラ（公開期間は発行から1カ月間です）

　遠くから見ると、黒い壁に窓が開いているように見える。窓の上には葡萄のツルが描かれている。実の一粒一粒にハイライトが置かれている（他の壁画でもそうだ）のを見つけて、これほど写実的な表現が2千年前に追求されていたことにとても驚いた。
　上部は赤紫色の壁。有翼の動物のようなグリュプスと、杯を持つ有翼の人物が交互につながる装飾が施されている。
　窓には酒の神様ディオニュソスとアリアドネが、なんだか同じような顔つきで描かれている。2人の間には親密な雰囲気が漂う。その様子を左から見つめているのはシレノス。2人の関係にびっくりしているように見える。目をむき、口をへの字に曲げるような表情をする人物が、これを描いた画家のすぐそばにいたのかもしれない。
　会期は26日まで。2階の休憩室で上映中の10分間の紹介ビデオ「ポンペイ―永遠の都」も必見である。とてもおもしろい。
山口県立美術館副館長　斎藤　郁夫