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2017年09月06日

朝の道

実際の紙面はコチラ(公開期間は発行から1カ月間です)

 いつも夕方に通る道を朝に通った。16時の道と7時半の道は全く違っていた。朝の道は、街路樹の緑も鮮やかで、空から射す光も柔らか。空気も水気を含んでしっとりと落ち着いている。
 青い長靴を履いた男の子がぐずって、「抱っこ」とお母さんに両手を差し出している。幼稚園の鞄が揺れる。お母さんが抱き上げると、男の子ははにかんだ笑顔を私に向けた。よかったね、私は手を振った。
 小学生の女の子の五人連れ。オカッパ、三つ編み、ポニーテール、ショートカット、ロングヘアー、様々。跳ねるように私の横を通り過ぎる。甲高い笑い声とランドセルの蓋の鳴る音を残して駆けてゆく。良い一日を。
 「おはようございます」とアルトの声。おはよう、と私も声を低く答える。中学生男子。恥ずかしいだろうに、挨拶をしてくれる。あの頃の私は下を向いて挨拶なんぞしなかった。得体のしれない不安がいつも背中にいた。朝の澄んだ空だって落ちて来そうな気がしていた。
 さー、と風が吹いて自転車が横を通り過ぎた。さっきの中学生より少し肉厚の背中。高校生だ。ちょっと前屈みで、思索的な横顔だ。横に友達が並んだ。二台連なってすぐに去っていった。
 朝の道は元気だ。少し秋の気配が匂うがまだ夏の尻尾が残っている。


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Posted by サンデー山口 at 00:00│Comments(0)おんなの目
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