サンデー山口

実際の紙面はコチラ（公開期間は発行から1カ月間です）

　畦道や河原の土手に彼岸花が満開だ。縄文の火炎土器のような形で天に向かって咲いている。秋だなあ。絶対忘れずに毎年咲く、何年も何年も…自然って偉大だ。かなわないなあ。
　「葉書用の52円切手下さい」「お客様、今葉書は62円です」「ああ、そうでしたね」。ついでにお金を下ろして帰ろう、とキャッシュコーナーに行き、カードを入れた。暗証番号が思い出せない。落ち着け、落ち着け、何回も使ったカードだ、暗証番号を忘れる訳がないじゃないか、落ち着け、きっと思い出せる。後ろに待っている人がいる。今日は止めよう…。
　なんたること、失敗ばかりだ。どうしよう、頭が病気になったか？　自転車で走っていたら、暗証番号がスラスラ出て来た。大丈夫じゃないか、九九でも言ってみよう、ニニンガシ、ニサンガロク、言える言える。頭はまだしっかりしている…。
　マーケットで買い物をしなければ。あれれ、買う物をメモした紙がない。家に忘れてきたらしい。まあいいや、覚えているものだけ買おう。牛乳とレタス…思い出せない。レタスに牛乳をかけて夕食にする訳にはいかない。パンでも買おう。レジに並んでポイントカードを出す。「お客様、カードが違います。これは他店のです。お客様、お客様」。彼岸花の赤がほほ笑む、大丈夫さ。