サンデー山口

実際の紙面はコチラ（公開期間は発行から1カ月間です）

　赤信号で交差点に立ち止まった時、商店街を歩いている時、川辺を散歩していて遠くに深緑の山々が見える時、ふっと時が停止し―私は今生きているんだろうか？―と一瞬（二十秒くらい）思うことがある。　
　時が止まり全てが動かなくなる。いや、私だけが動いている。…私は死んであの世とやらに居るのではないだろうか。そうか、あの世でも同じことをしているのか、と止まった周囲を見回しなんとなく納得する。
　そんな奇妙な不思議な感覚に襲われることがある。
　信号が青に変わると交差点では自動車が動き始め、商店街では賑やかな話し声が聞こえ、天ぷら屋から女性が出て来る。風が吹いて山の木々が動く。川は流れ始める。私は溜息をついて首をぐるりと回し肩をほぐす。生きている。
　目の前の世界が動きだすと、今度は皆が滞りなく生活をしているのが不思議でたまらなくなる。どこに行くのだろう、毎日何をして過ごしているのだろう、みんな忙しく働いているがその底では虚無が小さなマリモが段々と大きくなるように成長しているのではないか。そしていつか、突然、風景が止まり自分がどこに在るのかわからなくなる。私は生きているのだろうか？と。