サンデー山口

童話館出版
作・絵：イングリ・ドーレア
　　　　エドガー・ドーレア
　訳　：へんみ　まさなお
　トロールと言えば『三びきのやぎのがらがらどん』に登場する化け物を思い浮かべる人も多いでしょう。ノルウェーには、苔むした山、昼なお暗い森の中、海の底や川ぶちに様々なトロールが住んでおり、日没とともにあちらこちらをうろつき回る、と信じられていたようです。この作品は、北欧の厳しい自然の中で生まれたおはなしで、不気味な、しかしどこか間の抜けたトロールたちが登場します。
　トロールばあさんは料理好き。長く曲がった自分の鼻でシチューをかきまぜ味を整えます。頭が六つあるのに手は二本しかないトロールは「はらがへった！　おれがさいしょだ！」と食事のたびに頭同士で大げんか。一つの目玉を三人でかわりばんこに使っているトロールもいます。この目で世の中を見ると、美しいものは醜く、明るい所は暗く見えるのだそうです。
　トロールたちは太陽の光が大の苦手。光にあたった途端石になってしまうのです。
　ところがここ１００年の間にトロールたちはすっかり姿を消してしまったようです。みんな石になってしまったのでしょうか。それとも山の奥深くに隠れているのでしょうか。
（ぶどうの木代表・中村佳恵）