サンデー山口

福音館書店
絵：エウゲーニー・Ｍ・ラチョフ
訳：うちだ りさこ
　『てぶくろ』はウクライナ民話を絵本にした作品です。
　おじいさんが森で落としたてぶくろを一匹のねずみが見つけます。「ここで　くらすことに　するわ」。ねずみがてぶくろにもぐり込んだところへかえるがやってきて「わたしも　いれて」、二匹は仲よくあたたまります。やがてうさぎ、きつね、おおかみと次々に入り、てぶくろはぎゅうぎゅうづめになりました。最後にくまがもぐり込んだ時、てぶくろを落としたことに気がついたおじいさんが森にもどってきます。人の気配を感じた動物たちは大慌て。あっという間にてぶくろからはい出し、森のあちこちへ逃げていってしまいます。
　住み手が増えるにつれ、梯子がかかり、窓や煙筒がつき家らしくなっていくてぶくろの絵を見ていると、ナンセンスな民話がもっともらしく感じられるので不思議です。
　てぶくろにもぐり込んだ動物たちの穏やかなまなざしから、あたたかさを分かち合う幸せが伝わってきます。

（ぶどうの木代表・中村佳恵）