サンデー山口

福音館書店
文：トルストイ
絵：バスネツォフ
訳：おがさわら　とよき
　ロシアの深い森の中にくまの親子の家がありました。ある日、くまたちが散歩に出ていた時のこと、道に迷った女の子がこの家を見つけ入っていきました。女の子は机の上にあった三つのお碗の中でいちばん小さいお碗のスープを飲みほし、すわり心地のいい椅子で遊んでいるうちにこわしてしまいます。それから奥の部屋へ行き、ベッドにもぐって眠りました。
　帰ってきたくまたちはびっくり。子どものくまは自分のベッドで女の子が寝ているのに気付き、大声をあげます。目を覚ました女の子は窓から飛び出し、逃げていきました。
　これは『戦争と平和』等で知られるトルストイの書いたお話です。彼は祖国の貧しい農民の子どもたちのために、民話や昔話をもとにしたお話を残しています。これもその一つ。緊張感ある展開を淡々と追ったこのお話は、今でも多くの子どもたちの心を魅きつけます。絵もロシア人画家によるもので、深い森に生きる動植物が豊かに描きこまれ、お話に奥行きを持たせています。（ぶどうの木代表・中村佳恵）