サンデー山口

さ・え・ら書房
作：メアリ・テイラー
訳：百々　佑利子
　「オールド・ブルー」は一時期世界にたった一羽だけになったメスのブラックロビンの名前です。
　ニュージーランドの東にあるチャタム諸島は大昔、鳥の楽園でした。ところが人間が移り住むことで環境が変わり、たくさんの鳥が絶滅していきます。１９７０年の調査ではブラックロビンも絶滅寸前だということがわかりました。研究者の一人ドン・マートンは、ロビンが生き残れるよう考えられる限りの手を尽くします。しかしその努力もむなしくロビンは減り続け、とうとう５羽だけになってしまいました。
　そのうちの一羽オールド・ブルーは、自分たちの種の危機に気付いたのでしょうか、平均寿命の４、５年を大きく超えて１３年も生き、その間たまごを生み続けました。オールド・ブルー自身の生き残りへの強い意志と人々の懸命な努力によって、途絶える寸前だった生命の流れは勢いを取り戻し、１９９３年の調査では１３０羽ものロビンが確認されました。
　小さな鳥の奇跡の記録に命の力を感じます。
（ぶどうの木代表・中村佳恵）