サンデー山口

実際の紙面はコチラ（公開期間は発行から1カ月間です）

架空社
作：えびな　みつる

　六歳になった男の子はおとうさんから五つの品物をもらいました。
　「おとうさんにナイフをもらった」。よく切れそうな肥後守。どきどきしながら使ってみたら、紙やひもがすいすい切れる。竹とんぼも作れる。りんごもむけるし魚もさばける。でも……調子に乗って使っていたら、指を切ってしまった。
　「おとうさんにレンズをもらった」。レンズを通して庭を見ると、草むらはジャングルに、なめくじは怪獣に変身。おとうさんが、大小二つのレンズを組み合わせると望遠鏡ができると教えてくれたので一緒に作った。本当に使えるのかな？　半信半疑で月を見たら……まるで宇宙旅行しているみたい。
　他にもおとうさんは、便利な一方、使い方次第では危険を伴うマッチやロープを、遊び心を添えて手渡します。
　そして、「おとうさんにたねをもらった」。いろんな種類のたね。ぼくが選んだのは柚子のたね。鉢に植えると芽が出た。でも……実がなるまでに20年かかるんだって！
　20年後、この男の子はどんなおとなに成長しているのでしょうね。
（ぶどうの木代表・中村佳恵）