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2002年05月12日

札の辻・21

 鴻ノ峯山麓の5月を歩くと、薄みどり色をしていた木々の若葉が濃くなり、エゴノキは白く小さい花を枝にあふれさせていた。
 山頂に向かって吹き上げる薫風に、広葉樹林がざわめき、葉裏を返し波打って揺れる情景を、季語では青嵐と呼ぶ。
 今年も青葉満ちる庭園を眺めながら、山菜を食べる楽しみに恵まれた。毎年のことだが、湯田温泉はホテル喜良久の主人中村さんの、赤妻高台にある自宅で山菜料理を囲んだ。
 山菜は中・四国山地や、とくに東北地方では古くから主食と同等に利用されてきた。
 農文協の「日本食生活全集」によると、雪深い奥羽山系の地域では、春の雪解けを迎えると、ワラビ、ゼンマイ、ミズ、フキ、ノビル、コゴミ、ウルイ、ウド、タラの芽などが急速に伸びてくる。
 長い冬を耐えてきた人々は、一家総出で山菜採りに精を出す。そしてワラビやゼンマイは雪崩の多い傾斜地によく生えるというように、各々の山菜の自生地を心得ていて、山小屋に泊まり込みで採集するが、タラの芽を採るときは、必ず一芽を残し、後から出る追芽は摘まないようにするなど、山菜保護の決まりも守っているという。
 山形では、月山、羽黒山、湯殿山の出羽三山をめぐる山岳宗教の修験者や信者にとって、山菜は宿坊における貴重な糧であった。
 喜良久の中村さんは、奥出雲の出身なので、山菜採りや料理方法にもくわしく器用である。
 当日同席の県立大岩田学長は、自らが管掌する長門大寧寺裏山の山野草にも想いを馳せ、陶芸家の大和保男さんは、日々対峙する土が生む自然の味覚におどろき、一座は野生の食卓に魅了させられた。 (鱧)


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Posted by サンデー山口 at 00:00│Comments(0)札の辻
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