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2002年09月01日

札の辻・21

 瀬戸の雨
瀬戸で出会った潮同志
あなたは向うへ行きますか
私はこっちさようなら
なかはくるくる渦を巻く。 みすゞ

 仙崎のみすゞ通りを歩く。大正建築の名残も見せる町筋は、どの家にも玄関脇や軒先に金子みす ゞの詩を書いた札を吊し又は貼ったりしていた。通りから海側へ通じる横丁の先には海が見え、潮風がさわやかに吹き抜けてくる。
 極楽寺のさくら、八百屋の鳩、角の乾物屋、馬つなぎ場など、詩になった家並みがつづく。その一角に葉鶏頭を供えた地蔵堂があり、そばに据えられた焼物の狸に親しみを感じていたら、揚げ天の匂いが漂ってきた。匂いに誘われ近くの天ぷら屋に入り、早速揚げたての平天と串天を食べる。スリ身の魚が新鮮なのでうまい。食べる最中、店の中へ大きい蜂が1匹入ってきて、ゆっくりと天井近くを旋回して去った。蜂もまた匂いに魅せられて来たものか。
 仙崎は蒲鉾の町である。明治の中頃に始まる焼抜きは、新鮮で豊富な魚でつくる格別 の味が全国的に人気を集めた。
 古記録によると、仙崎は江戸時代に瀬戸崎浦と呼ばれ、日本海沿岸を航行する北前船の出入港としても栄えた。

 あまり可愛い島だから
 ここには惜しい島だから、
 貰って行くよ綱つけて、
 北のお国の船乗りが、ある日笑っていいました。  みすゞ

 仙崎湾に浮かぶその弁天島には、秋潮が白く砕けて島を縁どり、湾の空に鱗雲が高くひろがっていた。 (鱧)


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Posted by サンデー山口 at 00:00│Comments(0)札の辻
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