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店長情報

2002年09月15日

札の辻・21

 8月11日に篠突く大夕立があって以来、山口盆地には雨らしい雨は降らず、連日30度を超える猛暑が続き、9月に入ってからも水銀柱は昇り放しなので、暑さしのぎに友人と長門峡の鮎の宿へと出かけた。
 昏れるに遅い晩夏の夕刻、ヒグラシの声に迎えられて河畔の宿に着く。
 篠目川と阿武川との合流地点で丁字川とも呼ばれる渓谷に水は少なく、座敷の窓を開けると白く乾いた岩盤の河床が幅広く露出し、いつもは部屋にまで聞こえる瀬音もなく、1カ所だけ水深のある青い淵が澱んでいた。
 宿の南に見えるのは、山口市と阿東町の境界に聳える高羽ケ岳(761)に連なる山々で、尾根近くに点在するアカマツの木肌が残照に映えて美しい。
 出てくる川魚料理は、すべて阿武川で獲れる天然モノである。
 ウナギの湯びきはハモのそれと同じように包丁を入れた梅酢和えだ。これから初冬にかけて、味の乗ってくる川蟹も錆朱色の甲羅で登場した。
 落アユの時期となったアユは、背ごし、塩焼き、ミソ田楽、唐揚げ、ウマ煮とつづき、店の話によると雨が少なく岩苔の付きも悪いので小ぶりだとのことだが、味は香魚と呼ぶにふさわしい。
 珍しかったのは背ごしの盛り合わせに莫大海(ばくだいかい)が出たことである。それは中国奥地の四川省に産するナツメ大の木の実で、果 肉を水に浸すと海綿状にふくらみ三杯酢で食べる。湯田の料亭で出ることもあり古来中国では仙薬として珍重されたという。かつて長門峡では莫大海に対応できる岩茸(いわたけ)が採れたものだが。 (鱧)


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Posted by サンデー山口 at 00:00│Comments(0)札の辻
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