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2002年12月08日

札の辻・21

  冬ざれ、北風、山眠る、冬座敷、熱燗、枯菊などの季語を並べれば、そこはかとなくわびしさを、またうらはらにあわただしさを感じる師走である。
 師走とは僧(師)が年の瀬を迎えて、いそがしく走り廻ることから生まれた言葉といわれ、「師走坊主」ともなれば、お盆と異なり貧乏臭い落ちぶれ僧を連想する、と山頭火の生きざまと句を愛する俳人金子兜太氏はいう。
 その山頭火が下関長府在住の友人T氏へ、昭和8年の12月13日に出したハガキがある。
 「あたたかな小春日和が続いて、寒がりの老人喜んでいます。私の誕生日の三日にはうんと呑みました。アナが空いて風ひくほど。この頃食欲が減退し、そして歯が抜けて、やはらかい物しか喰べられないので閉口しております。といふ訳で御無心を申上げますが、山陽デパートの鯛の雲丹漬を一つ送っていただけませんか。来月できる句集と交換することにして」
 当時、山頭火は小郡の其中庵に住んでいた。一人暮らしの彼は精一杯のぜいたくとして、年忘れの酒の肴に鯛の雲丹漬を所望した。歯の抜けた老人と言っているが、まだ50代である。だが山頭火には金が無い。句集と交換というところに、師走の行脚僧の心象風景が覗えるようでほほえましい。

 あの雲が落した雨にぬれている
 越えてゆく山また山は冬の山    山頭火

 師走の、白く乾いた道をいそぐ山頭火の足音を枯葉が追う。 (鱧)


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Posted by サンデー山口 at 00:00│Comments(0)札の辻
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