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2003年01月26日

札の辻・21

 寒に入って夕餉の食卓に鍋物が登場することが多くなった。
 湯豆腐、ふぐチリ、豚チリ、アンコウ鍋などである。
 最近ではアンコウを鍋物用に調理したセットが、スーパーの鮮魚売り場に並んでいる。
 貝原益軒の「大和本草」に「坂東に多し、西州には稀なり、冬は味よく春は味劣る」とあるように、関東とくに北茨城の太平洋岸の深場で多く獲れるアンコウが、沿岸の底引漁が沖合へと伸びることにより、日本海側の山陰沖でも水揚げが多くなり、あのグロテスクな体形をした魚を、山口の町でも手軽に鍋にすることができるようになった。
  俗にアンコウの七ツ道具といって、肝臓、卵巣、胃袋、エラ、皮、身、ヒレと捨てるところなく食べられるのだが、軟体魚なので捌くのが難しく「アンコウの吊し切り」といって、梁などにぶら下げて包丁を入れる。

 顎を無残に引っかけられて吊り下げられ
 薄い膜の中での死。
 切りさいなみ削りとり
 だんだん稀薄になってゆくこの実存。

 「変な運命が見つめている」というリルケの言葉を冒頭に引用した村野四郎の詩「惨たんたる鮟鱇」である。
 東京神田「いせ源」の名代あんこう鍋よりも、戦後間もない頃、北茨城平潟港の、みぞれの降る漁師町の食堂で、ダシ汁にユズをしぼり込んで食べたアンコウ鍋の味が寒に入ると思い出される。
 簪と呼ぶアンコウのヒレと、豆腐を入れた鍋には芹のみどり色がよく合う。 (鱧)


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Posted by サンデー山口 at 00:00│Comments(0)札の辻
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