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店長情報

2003年03月02日

札の辻・21

 去る土曜日、防府市大道は長沢池近くにある萩焼長沢窯に、往年山口市で新聞社の支局長を務めていたOBが、九州からも含め数人集まった。
 窯場は、高く伸びた孟宗林と活葉樹林に囲まれて、まったく静寂の中にあり、樹間に咲くヤブツバキの赤が目立つ。
 この日、窯の仕事場には、2月中旬に亡くなったばかりの、日本を代表するマラソンランナー貞永さんの遺影が、氏と親交のあった窯の主人原田隆峰さんの配慮で安置されており、まずみんなで焼香した。
 毎年、2月3日の節分に、湯田でマスコミ関係者、陶芸家、造り酒屋の主人などが集まり、地酒を酌み、クジラやイワシの節分料理を食べる会が長く続いており、貞永さんも常連で、今年も元気に談笑の輪の中にあったのだが、この日から数日後の訃報となった。
 貞永さんのマラソン歴は、国内外の大会に数々の栄冠を飾って記録の金字塔に刻まれている。
 均整のとれた体形、意志の強さを秘めた眉と口もと、それは風浪に耐えて、磯の岩上に佇つ強靭な松の根を連想させた。
 月までの走程距離が、あと4500キロだと目標を定めていながらの突然の挫折、しかし彼の走魂は軽快な足どりで、月への完走に向かってひたすら走りつづけることだろうと想いたい。
 この夜集まった面々は、いずれも生前の貞永さんと交遊のあった者ばかりで懐旧談がつづき、待春の宴であったはずが、思わぬ惜別の盃となった。
 夜がふけて解散し作業場を出ると、四温の雨が登り窯の闇を濡らしていた。 (鱧)


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Posted by サンデー山口 at 00:00│Comments(0)札の辻
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