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2003年03月23日

札の辻・21

 今年の秋吉台の山焼きは再三延期して行われた。枯草の湿りで完全燃焼に至らなかったのか、いつもは北西の風に乗り山口市にまで、台上の春をつげる草灰の飛脚も姿を見せなかった。
 飛脚といえば、例年春になると中国大陸から季節風の運ぶ黄砂がある。
 このところ黄砂の飛来は多く、すでに3年連続で記録が更新された。かつては西日本中心に見られた現象も、昨年は釧路や網走など北海道でも観測史上初めて記録され、ついにはアメリカ西部海岸にまで到達した。
 黄砂の発生する地域は中国大陸北西部の黄土高原である。
 井上靖は『ゴビ、シリア、マルゴなどの砂漠のうちで、タクラマカン砂漠の砂の粒子が一番細かく、それが気温と気流の急速な変化で何本もの竜巻が起き、砂嵐となり一瞬にして地表を変える。その繰り返しで往古の王城も寺院も、大小の集落も砂中に埋められて何ひとつ存在しない』と西域紀行に書く。
 黄土高原の広範に及ぶ砂塵が春の嵐に舞い上がり、偏西風に乗って東へ東へと大飛行をつづける。
 2千年前のタクラマカン砂漠では、まだホータン川が川筋を砂漠の中に隠し、また現したりしてオアシスや草原もあった。だが現在は急速に砂漠化が進行し、1年間に神奈川県とほぼ同じ面積が砂漠になってゆくそうだから、黄砂の飛来はこれからもつづくだろう。
 中国では黄砂現象を黄塵万丈と呼ぶ。
 古来、日本には黄砂とは別に、春の気象情景を美的に表現した言葉がある。春がすみ、遠がすみ、霧や靄をからませた朧月夜など。(鱧)


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Posted by サンデー山口 at 00:00│Comments(0)札の辻
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